「成人期に発覚」ではなく、見逃されていた成人期のADHD
コンサータ錠(ヤンセンファーマ株式会社)が18歳以上への投与が適応拡大されたことを受け、5月24日にヤンセンファーマ株式会社主催の「アダルトADHDシンポジウム」が開催された。
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コンサータ錠の主成分であるメチルフェニデート塩酸塩は、第一種向精神薬に指定されており、2007年から小児期におけるADHDの治療薬として承認され、適正使用に関しても第三者委員会(コンサータ錠適正流通管理委員会)による流通管理が行われている。成人期の使用においても適正使用が求められるが、今回のシンポジウムでは成人期ADHD治療における診断や臨床データなどが発表された。
成人期のADHDは、成人になってから発症するのではなく、見逃されていたか、もしくは気がつかずに幼少期を過ごし成人になってから日常生活が不便になり気がつくというパターンが多い。成人期のADHDには主に、(1)幼少期に診断を受け、就労などで苦労している場合、(2)うつ症状などの二次的症状が生じ、他の診断がくだされ、発覚まで時間がかかっているケース、(3)不注意優性型で幼少期には見落とされ、成人になってから本人が気づき自ら受診という3つのパターンが考えられる。東京都立小児総合医療センター顧問で日本ADHD学会理事長の市川宏伸医師によれば、特に(3)のパターンが多く、社会に出てから周囲となじめないことに直面。マスメディアなどでADHDの存在を知り、知識を得て受診するケースも増えているという。
併存疾患が多く、診断・鑑別には最大限の注意が必要
成人期のADHDにおける特性としては、不注意、計画性や構造化スキルが乏しい、自尊心の低下などがあるが、依存症との併発、一流の職業や十分な教育を受けている、幼少期の症状を覚えていないなどで見逃してしまうケースも少なくないと、奈良県立医科大学看護学科人間発達学教授の飯田順三医師が講演した。またうつ病、双極性障害、不安障害、ナルコレプシーなどとの差異についての解説もなされた。特にうつ病との差異については、うつ病の場合はエピソードが限定的であるのに対し、ADHDに関しては慢性的であること、また主訴は必ずしもADHD症状ではなく、併存も多いことから、しっかりとした鑑別と診断が求められている現状を訴えた。
薬物治療は効果的だが、患者の生活機能改善を大きなテーマにすることが重要
こうした成人期のADHDに関しては、認知行動療法と共に薬物治療が奏功するという。奈良教育大学教育学部障害児医学分野教授の根來秀樹医師は「海外エビデンスから見るコンサータ錠」というテーマで講演を行い、「成人期に関してオープン試験はいくつか発表されているものの、現時点では二重盲検試験は少ない。しかし実行機能障害だけではなく、報酬系の障害が示唆されているADHDにおいて、報酬系にも作用するメチルフェニデートは有効な薬物である」と話した。
パネルディスカッションでは、成人期ADHD有病率の大幅な拡大は、診断の拡大、薬物治療対象者の拡大をどこまで行うかというテーマについても話し合われ、「控えめ」に診断し、患者の生活機能改善に焦点を当てた取り組みが必要であることを強調した。(大場真代)
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