■利活用は今後の検討課題
厚生労働省の「医療情報データベース基盤整備事業のあり方に関する検討会」は10日、報告書を大筋で了承した。医療情報データベース(DB)を活用し、薬剤疫学的手法を用いて医薬品の安全対策の向上を図ることの有用性を示し、2016年以降の本格稼働に向け、引き続き10カ所の拠点医療機関で基盤整備を進めていくとした。また、同事業の推進には、システムの構築・維持費や人員の確保が必要になるため、コストの一部をDBを利活用するアカデミア、製薬業界などに負担させる方向性を示した。ただ、製薬企業がDBを活用する場合の薬事規制との整合性などについては、今後の検討課題とした。
同事業は、副作用が発生した個々の症例を報告してもらう従来の副作用等報告制度では困難だった副作用の発生頻度や原疾患等の患者背景を疫学的に分析できるようにし、医薬品の有効性評価や安全対策に役立てるためのもの。
現在、全国10の拠点医療機関でレセプト、電子カルテ、オーダリング、検査からなるDBを整備しており、それらをネットワーク化することで、将来的に1000万人規模の医療情報DBを構築することを目指している。13年度から3年間の試行が決まっていた。
ただ、昨年6月の行政事業レビューで、1000万人規模のデータの必要性や目標達成に向けた道筋の不明確さなどから、外部有識者が「抜本的な改善が妥当」と判定したことを受け、同検討会で今後の事業のあり方を議論していた。
報告書では、同事業を「大規模データの解析により、例えば1万人に1人が発生する重大な副作用イベントを把握する上で効果が見込めるために「有用」と位置づけ、本格運用に向けて、まずは10拠点における基盤整備を着実に進め、DBのメリットを明らかにすることが重要とした。
また、試行期間中、データの分析・評価は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が行うシステムとなっているが、行政事業レビューで外部有識者から出た「データの活用について、もっと明確な方向性を打ち出しておくべきではないか」との意見を踏まえ、「製薬業界では、例えば一部の疾患やイベントに対して、リスクマネジメントプランにかかわる使用成績調査や特定使用成績調査の実施に代えて、こうしたデータベースを使うなど、本格運用後の本データベースの活用に期待している」とした。ただ、拠点病院・PMDA・厚労省以外の者が利活用するに当たっては、課題の洗い出しを関係者と共に行い、本格運用までに改善策を講じるよう求めた。
また、費用負担のあり方について、行政事業レビューで「利用者負担で考えるべき。製薬企業の自己負担の余地もあり、国費投入ありきというのは疑問」との意見が出たことを踏まえ、「利活用は行政に限定されず、アカデミアや製薬業界等における医薬品の安全性やリスク・ベネフィットバランス評価等への利用が想定される」と指摘。
その上で、「利用者の手数料等による負担も含めた検討が必要」とし、運用コストの一部を製薬業界などに負担させる方向性も打ち出した。
費用負担について、日本製薬団体連合会の青木事成委員は、事業によって見込まれる成果と、それに要するコストがどれだけかかるのかなどが明確になった上で、検討したい考えを示した。