北大病院は、昨年9月24日から処方箋用紙への検査値表示を開始。院外処方箋の下部に表示する方式ではなく、A4用紙の右半分に検査値項目を記載。保険薬局での処方監査、服薬指導に活用できるようにしている。薬局向けに表示する検査項目は、外来化学療法で必要とされる白血球数、好中球数等の副作用、投与量を決定する情報の腎機能、プロトロンビン時間、薬剤性副作用に関連するクレアチニンキナーゼ、HbA1c等13項目。近隣薬局と協議を行った上で決定した。
さらに、検査値項目の欄には、患者が自己申告した身長、体重、体表面積を記載し、抗癌剤の体表面積当たり投与量をチェックできるようになっており、近く北大病院で治療を行っている抗癌剤治療のレジメン名も記載する方向だ。
井関健薬剤部長は、「通常の抗癌剤は体表面積当たりで投与量を決めるのが普通で、そのデータなしに処方監査を行うのは、何もチェックしていないのと同じこと。病院の薬局や外来治療センターでの払い出し時と同じチェックを薬局でも行ってもらうことが大切」と話す。
一方、検査項目の表示部分を切り離し方式にすることにより、個人情報にも配慮した。患者は薬局で検査値が表示された部分を見られたくなければ、切り離すことができる。
井関氏は「切り離し方式にしたことで、システムを変えることなく、一般病院でも簡単に活用できる。いろいろな病院から検査値表示された処方箋用紙を受け、どの薬局でも検査データを判断して一定レベルの服薬指導を行ってもらいたい」と期待感を示す。
その上で、「患者が自らの意思で処方箋を出すことで治療に参加し、薬局で薬剤師から検査データの説明や処方内容をチェックしてもらっていることを実感できるよう、しっかり見せていくことが大事だ」と強調する。
北大病院の外来処方箋発行枚数は、1日2000枚以上、院外発行率は94%。門前のみならず、道内に広く分散している。同病院が行ったアンケート調査によると、検査値欄の提出率は約7割で、近隣薬局からも好意的に受け止められているという。検査値の利用方法を標準化し、服薬指導のレベルアップを図るため、近隣薬局と合同講習会を2回開催しており、検査値表示の効果が少しずつ実感されつつあるようだ。今後、要望の多い脂質系項目等、表示する検査値項目の見直しも行っていく。
井関氏は、「薬局で検査値欄を患者の服薬指導記録に挟んで保存してもらえれば、データの経年変化の推移が見られる。それを活用することで、服薬指導のレベルアップができる。だからこそ、大学病院からだけではなく、一般病院にも広げて、どの薬局でも受け取れるようにしなければならない」と強調する。
その上で、「検査データを見て、薬学的に判断した結果を説明する。これは本来、薬剤師が持っている職能であり、それを実践することが初めて患者目線につながるのではないか」と話している。