■日薬「容認できない」
日本薬剤師会の児玉孝会長は5日の会見で、薬価の引き下げを目的に財務省の財政制度等審議会などが求めている「薬価の毎年改定」について、「容認できない」との認識を示した。
反対の理由について、森昌平常務理事は、過剰な引き下げにつながり、製薬企業のイノベーション活動に対する意欲をそぐことになると説明。後発品を含めた製薬産業の発展や創薬に向けた取り組みへの影響にも懸念を示した。
一方、薬局では、「医薬品の備蓄に関する管理費などの問題がある」とした。森氏は、医薬品の備蓄コストは個別の調剤報酬で手当てされておらず、「適度な薬価差の中で対応しているのが現状」とし、「薬局経営にも影響が出てくる」と述べた。
また、改定前の価格で納入した医薬品は、同じ医薬品でも改定後の下がった薬価で保険請求しなければならない点も理由の一つに挙げた。森氏は、「薬価改定が行われてからしばらくの間は、改定前の納入価の医薬品が残り、買った時よりも安い価格でしか請求できない。これが毎年となると、薬局経営にとって大きな影響がある」と説明した。
診療報酬改定に伴うメンテナンス費用などにも言及し、「薬価が変われば、そういう部分に関しても薬局の負担になる」と指摘。改定を実施する厚生労働省の事務負担や、薬価調査に協力する側の負担も「過度なものとなり、大変」とし、薬価改定は診療報酬改定とセットで行う現行のルールが妥当との考えを示した。
■田村厚労相「実勢価の正確把握に疑問」
田村憲久厚生労働相も3日、閣議後の記者会見で、薬価の毎年改定について、「正確に毎年の実勢価格が把握できるかという問題がある」と指摘。6月にまとめる経済財政運営の基本方針「骨太の方針」に明記するのは難しいとの認識を示した。財政審は、5月30日に麻生太郎財務相に提出した報告書で、薬価の毎年改定を重要な改革課題に挙げ、実現を強く要求していた。田村氏は、「(毎年改定は)かなり煩雑になるのと、妥結率を見ても正確に毎年の実勢価格を把握できるかという問題がある。どこまで正確な数字が捉えられるか不安がある」と述べ、骨太方針への明記は難しいとの認識を示した。
また、「財政審が求めている期待が得られるかというと、どこまで効果が上がるのか率直な疑問がある。労力を払って事実上、実勢価格がつかめず、思ったような結果が出なかったら意味のない話になる」とも指摘し、毎年改定の実施に否定的な考えを述べた。
■日医「診療報酬改定とのセットで」
日本医師会も4日、見解を発表。薬価の毎年改定について反対姿勢を表明した。「診療報酬改定と薬価改定はセットで行うことを前提に薬価算定ルールが設定されており、薬価の毎年改定は、診療報酬とのバランスを欠く」と指摘。健康保険法で薬剤は診療と不可分一体と位置づけられていると主張し、「その財源を切り分けることは不適当」との考えを示した。
さらに、薬価の毎年改定は、医療機関や調剤薬局のレセプトコンピュータ等の更新に膨大な費用が発生するとし、請求業務等に携わる医療従事者の研修にも大きな負担を強いることになると問題点を指摘。日本製薬団体連合会、日本製薬工業協会からも、5月27日に薬価の毎年改定に反対する会長声明が出されていることに対し、「その意見を尊重したい」と支持を表明した。
湿布や漢方薬等の市販類似薬品のさらなる保険適用除外を進める必要があるとの提言に対しては、「公的な医療給付範囲の縮小を招く突破口になるおそれがある」と懸念を示し、「安易に市販類似薬品を保険適用除外とするのではなく、現場の実態を把握してから提案すべき」と主張した。