不明だったgBとPILRα結合の詳細
独立行政法人科学技術振興機構(JST)と北海道大学は6月3日、単純ヘルペスウイルスが宿主に感染するメカニズムを明らかにしたと発表した。
画像はプレスリリースより
この研究成果は、北海道大学大学院薬学研究院の前仲勝実教授、大阪大学免疫学フロンティア研究センター/微生物病研究所の荒瀬尚教授らの研究グループによるもので、アメリカの科学雑誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」オンライン版に、6月2日(米国東部時間)公開された。
単純ヘルペスウイルスは、好中球やマクロファージなどの免疫細胞表面にある抑制型免疫受容体PILRαを利用し、宿主に感染するといわれている。これまで、ウイルス膜表面に存在するさまざまな糖たんぱく質のうちglycoproteinB(gB)がPILRαと結合することによって細胞侵入が誘導されることが分かっていたが、その立体構造や認識機構についての詳細は不明のままだった。
侵入阻害剤や免疫賦活剤の開発に
同研究グループは結合前のPILRαと、PILRαとgBが結合した複合体の立体構造を明らかにし、原子レベルで結合機構を解明することに成功。これまでgBの糖部分を認識していると考えられてきたPILRαが、糖部分とたんぱく質(ペプチド)の両方を認識していることを明らかにしたという。また7つのアミノ酸からなる糖ペプチドを加えると、単純ヘルペス感染を阻害できることが判明した。
プレスリリースでは
PILRαは免疫系、神経系、ウイルス感染において幅広く機能を発揮しており、今回明らかとなった新しい認識機構は、ウイルス侵入メカニズムの理解や侵入阻害剤の開発だけでなく、PILRαによる広範な免疫の調節機構の理解とその調整薬やワクチンの効果を高める薬(免疫賦活化剤、アジュバント)の開発につながると考えられます。(独立行政法人科学技術振興機構 プレスリリースより引用)
と述べられている。(小林 周)
▼外部リンク
独立行政法人科学技術振興機構 プレスリリース
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20140603/index.html
北海道大学 プレスリリース
http://www.hokudai.ac.jp/news/140603_pr_pharm.pdf