国産バイオツールとして実用化、がん診断やDNA検出に
九州大学は5月30日、1979年に九州大学生産科学研究所(現・先導物質化学研究所)で発見された強蛍光性色素が、がんなどの疾病診断技術、およびDNA検出技術などに応用されるバイオツールとして、実用化されるめどが立ったと発表した。
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バイオツール用蛍光色素は、欧米で技術開発や特許化・製品化が進んでおり、国内ではこれらの輸入品に頼ってきたが、安定性が低く輸送中に分解するなど、入手したときには使えなくなっていることがあるといったリスクや、全般的に高価であることが課題となっている。そこで安価で安定性のある、蛍光色素の国産技術の確立が急務とされてきた。
今回の技術のもととなっているのは、1979年に九州大学生産科学研究所で発見された、蛍光分子のピリジノチア(オキサ)ジアゾールと呼ばれる化合物。この発見から、九州大学発のベンチャー企業における10年の開発期間を経て、福岡県などからの研究助成も受けながら、開発が進められてきていた。
高い水溶性、蛍光強度、電子線でも色あせない有望な蛍光色素「Fluolid-PM」
芳香環・複素芳香環ジアゾール誘導体を基本骨格とする蛍光分子は、固体状態でも強い傾向を示すほか、熱やpH、光安定性が高いこと、ストークスシフトが大きいといった利点を持っているという。しかし、これまで開発された蛍光分子は、いずれも生体内で使うための条件である水溶性に乏しいことから、一部の分野でしか実用化できなかった。
そこで開発目標として、バイオツールとして十分な高い水溶性を持つものとすること、従来の10倍以上の蛍光強度を持つこと、電子線で色あせないものであることを掲げ、産学官連携で製品化に向けた研究開発を実施。「Fluolid-PM」と名づけられた優れた蛍光色素の開発に成功したという。
Fluolid-PMでは、世界で初めて緑、黄、橙、赤の4色の蛍光色素を完成させている。従来の芳香環・複素芳香環ジアゾール誘導体を基本とする蛍光分子に比べ、最大11倍の蛍光強度を持ち、4色の色素とも高い標識率で抗体に結合するという。安定性も高く、実際にがん組織の4重染色が可能であることも実証された。4年間退色がないことも確認されており、染色した組織を標本として長期保管できるという利点もあるとしている。
今後、実際の医療現場などで使用できるよう、キット化や標識した抗体の製品化を進める予定で、国内生産への期待が高まっている。(紫音 裕)
▼外部リンク
九州大学 プレスリリース
http://www.kyushu-u.ac.jp/pressrelease/2014/