心機能と腎機能の緊密な関係性
国立循環器病研究センター 心臓血管内科部門の石原部長ら研究チームは5月26日、入院時の高血糖が急性心筋梗塞に伴う急性腎障害の合併を予測する簡便なバイオマーカーとして有用である可能性を示唆する研究結果を得たと発表した。
画像はプレスリリースより
心臓の機能と腎臓の機能には緊密な関係があり、その関係性は心腎連関として知られている。しかし、これまで急性心筋梗塞にどの程度急性腎障害(AKI)が合併して生じるのか、またどのような症例が急性腎障害に陥り、その予後がどうなるのかといった点について、十分な検討はなされてこなかった。
血糖値コントロールでの急性腎障害発生予防に関する介入研究にも期待
研究チームは今回、2007年1月から2012年6月までの期間、国立循環器病研究センターに発症48時間以内に入院した急性心筋梗塞760例を対象に、後ろ向き解析を実施。急性腎障害については、AKIネットワークの定義に基づき、クレアチニンが任意の48時間以内に0.3mg/dl以上、あるいは前値の50%以上上昇したものと定義した。
すると、全体の13%にあたる66例で急性腎障害が発生し、急性腎障害を発生したものでは、有意に院内死亡率が高いことが判明したという。急性腎障害の発生は、入院時の血糖値が高いほど高率で、血糖値18mg/dlあたり死亡率が10%上昇するという結果が得られている。このことから、入院時血糖値は急性腎障害発生の独立した予測因子であるとされた。
今回の解析を通じ、急性腎障害を合併した急性心筋梗塞患者では、有意に院内死亡率が高くなること、また入院時高血糖が急性腎障害合併を予測するマーカーとなることが強く示唆された。研究チームでは今後、急性心筋梗塞患者の血糖値コントロールを行うことで、急性腎障害の発生予防が可能であるか、介入研究が期待されるとしている。
なお、この研究成果は、5月23日付で米専門誌「Circulation Journal」に掲載された。(紫音 裕)
▼外部リンク
国立循環器病研究センター プレスリリース
http://www.ncvc.go.jp/pr/release/