医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 東北大 生体組織ダメージを反映する新しいバイオマーカーを発見

東北大 生体組織ダメージを反映する新しいバイオマーカーを発見

読了時間:約 1分44秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2014年05月27日 PM03:00

転移RNAの生体内変化を検知し、病気の早期発見や治療効果判別に

東北大学は5月15日、同大大学院医工学研究科の阿部高明教授らが、同大薬学研究科の富岡佳久教授らの研究グループ、静岡県立大学の伊藤邦彦教授らの研究グループとともに行った研究で、生体内の転移RNAが、酸化ストレスによって細胞がダメージを受けた際に構造変化を起こすこと、またその変化を検知することが新たなバイオマーカーとなることを発見したと発表した。


画像はプレスリリースより

生体内で生じる酸化ストレスは、細胞障害を引き起こして、さまざまな疾患の発現に関与することが知られている。だが、この酸化ストレスによるダメージを臨床的に早期検知することは、これまで困難とされてきた。

研究結果は同日、米国腎臓学会学術誌「Journal of the American Society of Nephrology」オンライン版に掲載されている。

酸化ストレスによりtRNAの高次構造が変化

今回研究グループは、tRNA内に特異的な構成成分のl-メチルアデノシンに着目し、細胞がストレスを受けたときの生体内におけるtRNAの変化を解析した。その結果、酸化ストレスを受けるとtRNAの高次構造が変化していることを発見した。

さらに、虚血状態や細胞毒性をもつ薬物投与などで酸化ストレスが生じ、細胞障害が起こるとtRNA由来の成分が増加することも見出したという。そして、これらtRNAの変化を検知することで、酸化ストレスによる生体組織ダメージを、既存の手法よりも早期に検知することに成功したという。

地域住民における解析で死亡率との関係も明らかに

研究グループは、すでにこの研究において岩手県花巻市大迫地区の一般地域住民1,000人を対象とした解析を実施し、血中の遊離l-メチルアデノシンレベルと死亡率との関係も明らかにしており、予後を反映する新たなバイオマーカーとしての有効性を示している。

今回の研究成果は、各種臓器の障害を早期に検知する新たなメカニズムに関する発見として注目されるものであり、今後臨床において、病気の早期発見や治療効果の判別などに貢献することが期待されている。(紫音 裕)

▼外部リンク

東北大学大学院医学系研究科/東北大学大学院医工学研究科 プレスリリース
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/

Journal of the American Society of Nephrology : Conformational Change in Transfer RNA is an Early Indicator of Acute Cellular Damage
http://jasn.asnjournals.org/content/early/2014/05/

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 【インフル流行レベルマップ第50週】定点当たり報告数19.06、前週比+9-感染研
  • 胃がんの化学療法、個人ごとの効果予測が可能なAI開発に成功-理研ほか
  • 「社会的孤独」による動脈硬化と脂質代謝異常、オキシトシンで抑制の可能性-慶大ほか
  • 胎児期の水銀ばく露と子の神経発達に明らかな関連なし、エコチル調査で-熊本大ほか
  • 血液中アンフィレグリンが心房細動の機能的バイオマーカーとなる可能性-神戸大ほか