■責任ある薬剤使用へ連携必要
日本は先進国の中で唯一、医師の調剤を容認している国とされ、医師が処方し、薬剤師が調剤する世界的な潮流と違うことが指摘されている。ブッフマン氏は「薬剤師の実務については、世界的にも少しずつ調剤から内容が変化してきている」との見方を示した。
FIPのミッションとして、世界の健康を守るために、責任ある医薬品の使用を進めていくことが薬局、病院に勤務する薬剤師の使命と強調。全世界で不適切な処方、調剤、カウンセリングが行われた結果、廃棄された医薬品が毎年50兆円の無駄を生み出しているとのデータを挙げ、単に医薬品を患者に渡すのではなく、適切な処方、調剤、カウンセリングと一緒に医薬品が患者に渡されることが、「責任ある医薬品の使い方」だと訴えた。
実際に現状を見ると、薬学研究者が優れた医薬品を発明し、患者に届けられたとしても、服用せずに廃棄されている状況があり、ブッフマン氏は「処方された医薬品の約半数が服用されていない」と指摘した。こうした問題解決に向け、「医療従事者が協力しなければいけない。その中で、薬剤師が重要な役割を果たすためには、調剤ではなく、患者のカウンセリングやケアに仕事内容を変えていかなければならない」との考えを示した。
その上で、「薬剤師を活用し、医師や看護師等と協力関係を築くことにより、無駄な医薬品は減ってくるだろう。この部分に目をつぶるのではなく、しっかりと見据えていくべき」と行動を促した。
また、薬剤師の業務内容をシフトさせると同時に、薬学教育に力を入れていかなければならないと課題を指摘。特に臨床、職能教育を発展させていくべきとの考えを示した。
「薬剤師には、もっと臨床実務に興味を持ってもらいたいし、薬学研究者には、サイエンスのみならず、臨床と教育にも興味を持ってもらいたい」と注文。薬学教育に資金を投入することで、結果的に国の医療費や薬剤費を削減できると訴えた。
日本の薬学関係者、薬剤師に対しては、「医師に尊敬されるような存在となるためには、単なる医薬品等の販売業者ではなく、国民の健康を守り、提供できる本当の薬剤師になってほしい。そのためには、しっかり教育された人材を送り出さなければならない」と、メッセージを送った。