脊髄損傷モデルラットを用い
京都大学は5月16日、同大学薬学研究科の武井義則特定助教らの研究グループが、脊髄での神経細胞産生を亢進させることにより、下肢麻痺を大幅に改善することに成功したと発表した。
この研究成果は、イギリス・MRCT(Medical Research Council Technology)社と京都大学との共同で特許出願され、イギリスの科学誌「Scientific Reports」誌に掲載された。
画像はプレスリリースより
成熟した脊髄の神経幹細胞は損傷部位に集まり、グリア細胞を産生する。しかし、神経細胞を産生しないために損傷された神経回路が自然治癒することがない。こうした神経細胞産生を阻害しているメカニズムは解明されてなかった。
細胞移植以外で治療できる可能性
同研究グループはこれまでに、神経細胞の再生を阻害するタンパク質NgRの細胞外部分をリン酸化すると、その活性化を阻害できることを見いだしている。
今回の研究では、NgRが神経幹細胞に発現しており、神経細胞産生能力を抑制していることを発見。脊髄損傷モデルラットで脊髄のNgRを抑制したところ、損傷部位近くで神経細胞が新生、下肢麻痺の大幅な改善が見られたという。
今後は、内在神経細胞新生で修復可能な損傷の規模や、細胞移植との併用によってその規模を拡大することができるかどうかを検討する予定だという。
プレスリリースでは
これから、どの程度の規模の脊髄損傷まで内在幹細胞の活性化で治療できるかを検討する必要がありますが、軽度の脊髄損傷であれば、細胞移植を行わずに内在幹細胞の活性化だけで治療できる可能性が期待されます。(京都大学 プレスリリースより引用)
と述べられている。(小林 周)
▼外部リンク
京都大学 プレスリリース
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2014/