■第3期は攻めの姿勢で
医薬品医療機器総合機構(PMDA)の近藤達也理事長は、本紙のインタビューに応じ、4月から第3期中期計画がスタートしたことを受け、「未来志向のレギュラトリーサイエンス(RS)で、これからはポジティブに英知で勝負していく。日本で初めて承認するような医薬品をどんどん増やしていく勇気を持っていきたい」と攻めの姿勢を強調。「世界の薬事規制の中で、倫理観を持った日本がトップリーダーとしてやれることはやっていく。日本の審査結果が世界で通用するよう信用を得ていきたい」との考えを示した。
近藤氏は、これまで大きな課題だったドラッグ・ラグ、デバイス・ラグ、薬害肝炎問題が相当に解消されてきたとの認識を示し、特に厳しい試練となった薬害肝炎問題でも「かなり国民の信頼が得られたと思っている」と指摘。ラグもほとんどなくなったとし、今年度からの第3期では、科学委員会や連携大学院の活動を通じて、日本で初めて承認する医薬品等を増やしていきたい考えを示した。
そのために、中期計画では、審査ラグ「ゼロ」の実現を目指すと共に、2016年度以降に申請される医薬品の臨床試験データの電子的提出を義務化し、PMDA自ら生データ解析を行い、薬事戦略相談では新たに開発工程(ロードマップ)への助言を行う等の野心的な目標を打ち出している。
近藤氏は「第2期は自分たちの組織をしっかり確立し、実力をつけるための体制を作るため一生懸命やってきたが、人員も増えて職員にも自信がついてきた。これからは欧米やアジアに対し、日本は倫理的なことに配慮した国家であるということを薬事の世界に広めていこうと思っている。それゆえに今期はポジティブにいきたい」と攻めの姿勢を強調する。
国際性も重視し、「日本で承認した医薬品、医療機器は、世界でも同時に共有していかなければならない。日本も様々な面でイニシアチブを取り、世界の規制当局と呼応する形でコラボレーションしていく」と世界のリーダーを目指す考えを示した。
また、薬事戦略相談について、「PMDAは多くの審査、安全性データを持っているので、シーズの段階から適切な指導ができる。いつぐらいにシーズを製品化でき、どの程度の市場が見込めるかが分かれば、ベンチャー企業も発明者をサポートでき、死の谷が救われる。こうした仕組みを実行できる国はそんなにない」と述べた。
既に日本では審査ラグがほとんどなく、承認イコール保険収載という広い皆保険市場があることから、欧米のベンチャー等が日本で世界初申請を目指す等、注目しているとされる。近藤氏は「審査のスピードと大きな市場があるという認識が広がってくれば、世界中で評価されるだろう。日本での承認取得がそのまま欧米等での承認につながるぐらいに信用されるエージェントになれば、かなりいい勝負ができる」と意気込みを語っている。
第3期中計では、常勤職員を1065人まで増員する体制強化も打ち出している。「現在も751人体制で業務的には質が高いと欧米からも見られている。1065人への増員は焼け太りではなく、いよいよ未来に向けた仕事をしていくということだ。その意味では非常に大事な時期になる」と気を引き締める。
その上で、5年後の計画の着地について、「いま大学や臨床研究中核病院で、いろいろなシーズが出始めており、5年後には日本発の医薬品、医療機器が相当出てくるだろう。これは世界的に刺激的なことで、日本を見習えという流れが出てくるのではないか」と期待を込める。
そのためにも「日本国民が謙虚さと倫理観を忘れることなく、自信を持つことが大事」と強調。薬事戦略相談、科学委員会、連携大学院、レギュラトリーサイエンスを持っていることは非常に大きいとして、日本が欧米を上回るイニシアチブを取っていけると自信を示した。