細菌と免疫系が共生する腸内
慶應義塾大学の長谷耕二教授らのグループは4月25日、腸管の免疫細胞が腸内細菌と共生するために不可欠な分子があることをマウスの実験により明らかにしたと発表した。同研究成果は現地時間4月28日付で、英科学誌「Nature Immunology」オンライン版に公開された。
画像はプレスリリースより
胎児は、母体内にいる時は無菌状態だが、出生後すぐに100兆個もの菌にさらされ、腸内に膨大な数の菌が定着する。この時、過剰に菌を攻撃しようとする免疫系がどのように制御され、菌との共生関係が生まれるのかは、これまで明らかにされていなかった。
制御性T細胞をコントロールするUhrf1分子
これまでの研究で、無菌マウスに腸内細菌を定着させると、免疫系の働きを抑える制御性T細胞の分化と増殖が、大腸で行われることが明らかとなっていた。さらにこの分化と増殖は、異なる仕組みで制御されていると予想されていた。
同研究グループは今回、マウスを用いた実験で、制御性T細胞を増殖させるためには、Uhrf1という分子が必要であることを発見。Uhrf1が欠損しているマウスは、制御性T細胞の増殖が少なく、免疫が過剰反応するため、慢性大腸炎を引き起こすことも明らかとなったという。
近年の食生活の欧米化にともない、日本人の消化器系の患者数は毎年増加しており、根本的な治療方法が望まれている。今回の研究成果は、腸内細菌と免疫系のバランスが崩れることによって発症する炎症性腸疾患の治療やその開発に、大いに貢献すると期待される。(白井蓮)
▼外部リンク
慶應義塾大学 プレスリリース
http://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2014/