横浜市立大学医学群研究グループが発見
横浜市立大学医学群 病態免疫制御内科学教室の石ヶ坪良明教授らの研究グループは4月30日、ベーチェット病の発症に細菌成分が関与していることを新たに発見し、遺伝学的に証明したと発表した。この研究成果は、米国アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」オンライン版に掲載された。
ベーチェット病は全身に発作的な炎症を繰り返す難治性疾患であり、厚生労働省の特定疾患として、最初に認定された疾患でもある。その発症には、細菌やウイルス感染が関わっているとみられてきたが、これまで確かな証拠は見出されていなかった。
次世代シーケンサー解析で健常人とは異なる細菌への反応を確認
研究グループは、米国国立衛生研究所、トルコイスタンブール大学と国際共同研究を行い、日本人・トルコ人あわせて約5,000例の患者あるいは健常人の検体を収集。細菌成分を認識する分子など、自然免疫に関わる遺伝子11個と、ゲノムワイド関連解析で見出された10個のタンパク質遺伝子情報を含むエキソンを、次世代シーケンサーを用いて解析した。
すると、グラム陰性菌の成分であるリポポリサッカライド(LPS)の受容体であるTLR4や、同様にグラム陰性菌やグラム陽性菌の成分であるムラミルジペプチドの受容体、NOD2の変異分布が、ベーチェット病患者と健常人では異なっていることが判明したという。このことから、ベーチェット病では、これらの細菌に対する反応が健常人とは異なっている可能性が示唆された。
また解析を通じ、発作性の発熱や腹痛、共通などの原因となる漿膜炎を起こす家族性地中海熱の原因遺伝子として知られるMEFV M694V(694番目のパイリンのメチオニンがバリンに置換しているもの)をもつ人の場合、ベーチェット病になりやすいことも示されたという。
研究グループでは、今回、細菌成分がベーチェット病発症に関わっている証拠が得られたことから、今後、細菌自体に対する抗菌加療や、細菌に対する反応を調節するタイプの治療など、従来とは異なるベーチェット病の新規治療法開発が見込めるとしている。また古くからいわれる通り、口腔内など細菌が多い部分を清潔に保つようにすることが重要であることが改めて示された結果でもあるとまとめている。(紫音 裕)
▼外部リンク
横浜市立大学研究推進センター 発表資料
http://www.yokohama-cu.ac.jp/res_pro/researcher/
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America : Targeted resequencing implicates the familial Mediterranean fever gene MEFV and the toll-like receptor 4 gene TLR4 in Behçet disease
http://www.pnas.org/content/110/20/8134.full