第1相臨床試験で良好な結果を受け
タカラバイオ株式会社は5月1日、米国において新規のがん治療薬「HF10」に関する第2相臨床試験の実施を目指し、現地時間4月30日付で米国食品医薬品局(FDA)に臨床試験実施申請資料(IND)を提出したと発表した。
画像はwikiメディアより引用
がん治療薬HF10は、単純ヘルペスウイルス1型の弱毒型自然変異株で、がん局所に注入すると、顕著な抗腫瘍作用を示すもの。正常細胞ではほとんど増殖しないが、がん細胞に感染すると増殖し、がん細胞を死滅させることが動物実験などで明らかにされている。
こうした抗がん作用を示すウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスと呼ばれ、がんの治療薬として注目されている。増殖によって直接的にがん細胞を破壊するほか、放出されたウイルスが周囲のがん細胞にも感染、また破壊されたがん細胞の断片ががんに対する宿主の免疫を活性化するため、投与部位以外のがんも縮小することが期待されるという。
先に行われた第1相臨床試験では、HF10を投与した際の安全性、体内動態および腫瘍縮小効果などが検討され、良好な安全性が確認された。また一部の症例では、腫瘍の増大が抑制され、腫瘍免疫効果を示唆する血中成分の変動もみられたという。
併用投与で有効性、安全性、免疫学的検査などを評価
今回、実施申請資料を提出した第2相臨床試験では、治癒切除不能または転移性悪性黒色腫を対象にHF10と、CTLA-4を標的とする完全ヒト型モノクローナル抗体の「YERVOY(R)(一般名:Ipilimumab)」を併用投与する。症例数は43人、試験期間は2年間で、腫瘍縮小効果や無増悪生存期間、1年生存率などの有効性および安全性、免疫学的検査などの評価を行う予定だとしている。
なおHF10については、タカラバイオの施設で製造したHF10製剤を腫瘍内投与する計画という。実施施設はユタ州のハンツマン癌研究所など約9施設で、今後、これら試験実施施設の治験審査委員会(IRB)などによる審査を経て、被験者登録を開始するとしている。(紫音 裕)
▼外部リンク
タカラバイオ株式会社 ニュースリリース
http://www.takara-bio.co.jp/news/2014/05/