ケンブリッジ大学らとの共同研究により
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 基礎生物科学研究所は5月2日、同研究所の原健士朗助教と吉田松生教授ら研究グループが、マウスをモデルとして、精巣の中の生きた精子幹細胞の知られざる性質を突き止めたと発表した。
この研究は、英ケンブリッジ大学、京都大学、神戸大学、理化学研究所、東北大学との共同研究によるもの。研究成果はアメリカの科学雑誌「Cell Stem Cell」に5月2日付で掲載された。
画像はプレスリリースより
大人の精巣では、毎日多数の精子が長期間作り続けられている。この精子形成を支える精子幹細胞が枯渇すると、精子が作られずに不妊の原因となるため、精子幹細胞の実体を知ることは、基礎生物学のみならず医学的見地からも重要な課題だ。
精子になる前の精原細胞は、1つ1つの細胞がバラバラに分かれた「As細胞」と、2個以上の細胞が繋がった「合胞体」という異なるタイプの細胞種に分類される。これまで、「精子幹細胞は、ずっとAs細胞であり続ける」と考えるAsモデルが広く支持されていた。
改良した精巣ライブイメージング法で観察
今回、研究グループは、開発した緑色蛍光タンパク質(GFP)を利用した精巣ライブイメージング法を改良し、精巣内における生きた精原細胞を観察。蛍光標識した精原細胞を数日間観察し続けたところ、As細胞が細胞分裂する際、ほぼ全ての場合、合胞体になる一方で、合胞体は細胞分裂に匹敵する高い頻度で断片化し、新たなAs細胞が生まれることを発見した。
続いて、8000時間を超えるライブイメージング映像から精原細胞の挙動をまとめたところ、As細胞と合胞体は、細胞分裂と断片化によってお互いの状態を行き来していることが示されたという。さらに、1年以上続くマウス精子形成は、ライブイメージングで観察されたAs細胞と合胞体の細胞分裂と断片化の繰り返しによって支えられていることが、数理モデル解析によって強く示唆されたという。
これら結果から、「精子幹細胞は、タイプの異なる細胞(As細胞と合胞体)がお互いの状態を繰り返し行き来しながら、どちらも区別なく幹細胞として機能する」という新説を提唱するとしている。
プレスリリースでは、
と述べられている。(小林 周)
▼外部リンク
基礎生物科学研究所 プレスリリース
http://www.nibb.ac.jp/press/2014/05/
Mouse Spermatogenic Stem Cells Continually Interconvert between Equipotent Singly Isolated and Syncytial States
http://www.cell.com/cell-stem-cell/abstract/