NF-κBデコイオリゴを用いたアトピー性皮膚炎治療薬で開発戦略変更
創薬ベンチャーのアンジェスMG株式会社は5月2日、同社が塩野義製薬株式会社と共同で開発を進めている、核酸医薬のNF-κBデコイオリゴを用いたアトピー性皮膚炎治療薬について、開発戦略の変更を決めたことを発表した。今後、新たな製剤技術を検討していくという。
アンジェスMGと塩野義製薬は、平成25年6月から、株式会社メドレックスの経皮製剤技術を採り入れたNF-κBデコイオリゴのアトピー性皮膚炎治療薬で、第1相臨床試験を実施してきていた。発表によると、得られたデータを分析した結果、現行の製剤では第2相臨床試験には進めないことが適当と判断したとされている。
同剤については、臨床開発の成功確率を高めるべく、新たな製剤技術の検討を行っていく方針だ。開発については、2社の合意に基づき、アンジェスMGが主体となって進めていくとされている。なお、今回の決定により、アンジェスMG、塩野義製薬、メドレックスの関係性が変わることはなく、それぞれの提携は継続されるという。
最適の効果を実現する製剤技術の選定、開発を
アンジェスMGが開発しているNG-κBデコイオリゴ核酸は、遺伝子が発現する際、転写因子のタンパク質がゲノムの特定の配列領域に結合してスイッチが入るが、デコイオリゴ核酸は、そのゲノム上の転写因子結合部と同じ配列を含む短いDNAを人工的に合成したものである。細胞内でゲノムの“おとり”として特定の転写因子と結合するため、その転写因子がゲノムに結合できず、結果としてその遺伝子発現が抑制されるという仕組みだ。
アンジェスMGでは、生体内で免疫・炎症反応を担う遺伝子群のスイッチ「転写因子NF-κB」に対する特異的阻害剤としてNF-κBデコイオリゴを設計し、NF-κBの活性化による過剰な免疫及び炎症反応を原因とする疾患の新規治療薬開発を目指している。とくにアトピー性皮膚炎やPTA後の血管再狭窄、椎間板性腰痛症を対象とした開発プロジェクトが進行しているが、ほかにも関節リウマチ、変形性関節症、炎症性腸疾患、喘息などへの適用も有力と考えられているという。
このNF-κBデコイオリゴは、通常の低分子医薬品に比べて、大きなサイズの分子であることから、医薬品として最適の効果を発揮させるためには、この大きな分子を効率的に皮膚透過させる製剤技術との組み合わせが欠かせない。
新たに検討する製剤技術としては、今回とは異なるメドレックスの新技術や、メドレックス以外の技術、およびアンジェスMGが過去に第2相臨床試験を実施した軟膏製剤を含んでいる。アンジェスMGでは、候補になり得る製剤技術を改めて幅広く検討し、アトピー性皮膚炎を対象としたNF-κBデコイオリゴに最適な技術を選定、開発を継続していくとしている。(紫音 裕)
▼外部リンク
アンジェスMG株式会社 ニュースリリース
http://www.anges-mg.com/pdf.php?pdf=100725.pdf
アンジェスMG株式会社 NF-κBデコイオリゴ
https://www.anges-mg.com/project/