神経伝達物質の受容体の輸送を制御するタンパク質
沖縄科学技術大学大学院は4月25日、同大大学院の山本雅教授率いる細胞シグナルユニットの研究チームが、LMTK3という細胞内タンパク質を欠損させたマウスは多動性行動異常を示すことを発見したと発表した。この研究成果は、現地時間の4月23日付で米科学誌「Journal of Neuroscience」に掲載されている。
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LMTK3は受容体の細胞内輸送に係わるタンパク質で、脳内の大脳皮質や海馬に多く存在する。脳における神経細胞間の情報伝達では、情報を送る前シナプスから神経伝達物質が放出され、後シナプスに存在する受容体がそれを受け取るという仕組みがあるが、研究チームは、LMTK3が後シナプス内において、神経伝達物質の受容体の輸送を制御するタンパク質であることを突き止めたという。
LMTK3欠損マウスでは、神経細胞でこの受容体が細胞内に蓄積しており、シナプスにおける情報伝達を正常に行えなくなっているものと考えられた。そこでこの欠損マウスの行動を仔細に調べ、様々なその行動異常を検証したところ、落ち着きの欠如や音に対する過敏反応など、多動性障害と同様の性質を示すことが判明したという。
ドーパミンも高数値、さまざまな行動障害の病態メカニズム解明に期待
また研究チームは、このLMTK3欠損マウスでは、ドーパミンが高い数値を示すことも確認している。ドーパミンの過剰分泌は神経活動の統合性を失わせ、統合失調を引き起こすことが知られているため、LMTK3の作用とドーパミン代謝の関連性が注目される。
LMTK3が受容体輸送を制御し、行動障害のひとつである多動性発症に深く関与していること、また、ドーパミンの代謝と関係性があることが研究を通じて示された。しかし、これらの詳細メカニズムは依然解明されていないことから、研究チームでは引き続き研究を進めていきたいとしている。
この研究は将来、人における行動異常を示すさまざまな疾病、注意欠陥・多動性障害(ADHD)や自閉症などの病態メカニズム解明につながる可能性があり、その進展が期待されるところだ。(紫音 裕)
▼外部リンク
沖縄科学技術大学大学院 ニュース
http://www.oist.jp/ja/news-center/
LMTK3 Deficiency Causes Pronounced Locomotor Hyperactivity and Impairs Endocytic Trafficking
http://www.jneurosci.org/content/34/17/