大商では、2006年から国内外の創薬シーズを大規模に収集し、製薬企業に情報提供する「Drug Seeds Alliance Network Japan(DSANJ)」事業を展開。今回、DSANJ事業で収集した創薬シーズについて基盤研と連携し、創薬シーズの実用化に向けた最新の科学技術に関する評価(目利き)を行う。また、その評価結果に基づき疾患別商談会でパートナーとなる製薬企業への橋渡しや、創薬支援ネットワークにおける技術支援が有効と考えられる有望シーズへの技術支援の提供を実施する。
これまで基盤研は、大学等で行う基礎研究を製薬企業等に「橋渡し」するための産学官共同研究等を推進。医薬品等の基盤技術開発を目指した「研究遂行」「資源分譲」「資金提供」を統合してワンストップで推進・支援。13年には基盤研に設置された創薬支援戦略室が、日本再興戦略に基づき、理化学研究所、産業技術総合研究所等と連携して創薬支援ネットワークを構築。日本の大学等で生み出された実用化の可能性が高い創薬シーズの探索研究から前臨床開発まで支援する創薬総合支援事業を展開している。
同日、大阪市内で会見した基盤研の創薬支援戦略室(iD3)室長の榑林(くればやし)陽一氏は今回の提携について「われわれの行う有望なアカデミア発創薬シーズの発掘作業を加速してくれると期待している。DSANJは有力な製薬企業など70社が参加する創薬シーズとの提携商談会を開催し過去8年間で約40件の共同研究を支援している。こうした実績を持つ商談会を出口戦略の一つとして活用できることも大きなメリット」と提携の理由を説明した。
その上で「今回の連携は互恵的な戦略提携だと考える。密接に協力してオールジャパンでのアカデミア創薬の活性化を目指したい」と展望した。
一方、大商副会頭の手代木功氏(塩野義製薬社長)は「製薬会社の立場としては高い基礎領域の研究成果をどうやって創薬に結びつけていくかが課題」と指摘。
さらに、知的財産など後手に回るアカデミアと新薬創出を重視する製薬企業との意識のギャップがあるとの認識も示した。今回の提携で「製薬会社のニーズに近づけた後に、両者の橋渡しをすることができればアカデミア発、日本発の創薬が一歩加速すると考えている。提携をベースにして大学、研究機関の研究成果が民間の製薬企業にスムーズに結びつき、出口戦略のスムーズ化に貢献していきたい」と強調した。