日本赤十字社医療センターおよび横浜市立大学と
株式会社島津製作所は4月24日、同社が開発を進めるがんの迅速病理診断支援システムの実用化を目指し、日本赤十字社医療センターおよび公立大学法人横浜市立大学と臨床研究を開始すると発表した。4月下旬にも両施設にプロトタイプ機を設置するという。
日本赤十字社医療センターでは肝臓がんについて、横浜市立大学では腎臓がんについて、それぞれ共同研究を行う予定だ。
(画像はプレスリリースより)
迅速病理診断支援システムは、島津製作所のもつ独自の質量分析技術に、山梨大学が開発した新イオン化技術の探針エレクトロスプレー法と、早稲田大学の開発した統計的学習機械を組み合わせてシステム化されたものだ。科学技術振興機構先端計測分析技術・機器開発プログラムにおいて、その開発が進められている。
分析開始から約2分で結果、専門の医師でなくても可能
同システムでは、まず患者から採取した2ミリ角程度の組織片をプレートにセットし、先端径が数百ナノメートルの針を刺す。そこに付着したごく微量、数ピコリットルの試料に高電圧をかけてイオン化し、そこに含まれる成分の質量分析を行うという。
そして既知のマススペクトルデータからがん特有の潜在的パターンを学習したdPLRMが、得られた未知のデータに対し、がんの存在する確率を自動判定する。
分析開始から約2分と非常に短時間で結果が得られるといい、これは従来の術中病理診断では標本作成から観察・診断まで30分程度かかることを考えると、非常に効率的だ。またこのほかにも、複雑な前処理も不要で、操作が簡単であるため、専門の医師やオペレーターでなくても分析が可能など、多くのメリットがある。
3年後を目安に市場投入を、その他がんへの適用拡大も図る
プロトタイプ機の開発にあたり、同社では、肝臓がんや腎臓がん、大腸がん、胃がんの患者から採取した試料で、病理診断との比較を実施、その性能を検証したところ、約85~98%と高い一致率を得たという。
現在はがん・非がんを判定するデータベースだが、これをがんの進行度や組織型に応じたものへと細分化させ、化学療法の方針決定にも応用できるものへ進化させることも検討するとしている。
同社では、今回実施する共同研究の成果をもとに、がんの迅速病理診断支援システムを確立し、治験、薬事承認を経て3年後を目処に市場投入を目指すという。またその他のがんへの適用拡大も図るとしており、今後の臨床現場における応用が期待されている。(紫音 裕)
▼外部リンク
株式会社島津製作所 プレスリリース
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