掌のような構造を持つクローディン
独立行政法人新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)は4月18日、創薬加速化支援事業の支援を受けた、名古屋大学、東京大学及び大阪大学の共同研究により、人体の体表面や器官表面を構成する細胞同士の構造的なつながりを解析することに成功したと発表した。この研究成果は、同日発行の「Science」に掲載された。
(画像はプレスリリースより)
人間の体は、上皮細胞が互いに接着して体表面や器官表面をシート状に覆うことにより、内と外を分け、栄養吸収やイオン環境保持などの生体機能を保っているという。
この役割を果たすのは上皮細胞で、密に接着する細胞間接着構造(以下、タイトジャンクション)がベルト状に細胞外周を囲むことでバリア機能を発揮しているとされる。タイトジャンクションは「クローディン」と呼ばれる膜タンパク質から形成されているが、この分子がどのようにベルト状の構造を形成するのかは、クローディンの発見から15年以上経てもなお未解明のままだったという。
今回の研究により、このクローディンがどのようにベルト状の構造を形成するかが明らかになった。クローディンは細胞外に掌を向けたような構造を持っていること、表面の電荷の正負でイオンの制御ができること、この分子が細胞膜中で数珠つなぎに並んだベルト状の構造を形成して細胞同士を密着させて多くの透過経路を形成することなどが、発見されたという。
脳への薬剤浸透制御の開発につながると期待
1つのクローディンは4つの膜を貫通し、左巻きの束を形成。細胞外の2つのループより形成される5つの構造は掌のような構造を示し、イオンの制御を行っているという。
クローディンのバリア機能は、血液脳関門における血管内皮細胞間隙の物理的障壁としても顕著であり、これまでは不可能と思われてきた脳への薬剤の浸透制御を可能にする新規薬剤送達方法の開発につながると期待されている。(木村 彰男)
▼外部リンク
独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 NEDO プレスリリース
http://www.nedo.go.jp/news/press/