米国で健常人投与完了、患者への安全性・薬効検証へ
日東電工株式会社(Nitto)は4月22日、2008年より同社が札幌医科大学新津洋司郎特任教授と共同で開発を進めてきた、肝硬変をはじめとする臓器線維症治療薬について、第1相試験における健常人への投与を完了したと発表した。
この治験第1相試験は、2013年6月より米国で開始されていたもので、今後は第1/第2相試験を実施、患者への薬剤の安全性および効果検証を行うとしている。
(画像はwikiメディアより引用)
分子標的DDS技術による線維症治療薬、世界初の根本的治療法確立を目指す
開発が進められている治療薬は、線維化の原因を選択的に抑制するsiRNAを薬物として用い、ビタミンA誘導体を標的化剤として患部にのみ選択的に送達し、高い安全性と効果の発揮を目指す薬剤。こうした薬物送達と作用の双方で特異性をもつ。
有効な治療薬として開発に成功すれば、線維症の根本的治療につながる世界初の薬剤となるものであり、肝硬変をはじめ、それ以外の各種臓器線維症にも展開可能という。Nittoによると、治療方法に関する基本特許については、すでに日本、中国、豪州、米国、カナダに次いで、欧州、韓国でも取得し、さらに治療薬のsiRNAおよびDDSという構成に関する特許も成立しているそうだ。
今後のスケジュールとして、線維症治療薬については米国での第1/2相試験で、患者を対象とした安全性と治療効果の検証を進める。第2相試験後半以降は、製薬企業との連携も視野に入れ、2018年以降の実用化を目指すという。
がん治療などへの応用も視野に
Nittoは、高分子合成技術などをベースにさまざまな技術を組み合わせ、エレクトロニクス関連材料や工業用テープなどの製品の製造を手がけているが、経皮吸収型テープ製剤や核酸合成といった領域でメディカル分野の事業展開も行っており、この分野で蓄積されたノウハウを今回の治療薬開発においても活用している。
また同社では、この治療薬を用いた治療方法による臓器再生メカニズムの解明を進めるとともに、開発を通して構築された技術基盤をがん治療などへ応用することも視野に研究を行っているという。これらの研究についても、札幌医科大学、および北海道大学と協力するなど、産学連携での試みを積極的に進めている。(紫音 裕)
▼外部リンク
日東電工株式会社 ニュースリリース
http://www.nitto.com/jp/ja/press/2014/0422.jsp