原則「申請主義」という福祉制度の問題点
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター病院
医療福祉相談室長・漆畑眞人氏
社会生活や就労において強い不安を抱えているてんかん患者。適切な治療で発作をコントロールすることはもちろんだが、QOLの向上や治療継続のためには、福祉制度の活用も重要な手段の1つといえる。
抗てんかん薬「イーケプラ錠(一般名:レベチラセタム)」を販売し、てんかんの正しい理解に努める大塚製薬株式会社とユーシービージャパン株式会社は「てんかんアカデミー」をメディア向けに4月23日に開催。独立行政法人国立精神・神経医療研究センター病院の医療福祉相談室長・漆畑眞人氏による「てんかん診療ですぐに活用できる福祉制度~制度申請のための診断書作成のポイント~」というテーマの勉強会だ。
患者QOL向上のために医師の理解と担う役割とは
てんかん患者は、医療によって肉体的・精神的に健康をとり戻すことはできる。しかし、社会的な障害を抱えることもある。てんかん患者とその家族がより有意義な人生を送るため社会的な障害を克服するのに役立つのが福祉制度の活用だ。
てんかんで利用可能な主な福祉制度は、自立支援医療(精神通院)、精神障害者保健福祉手帳、障害年金の3つがある。
自立支援医療(精神通院)制度を利用すると指定医療機関への通院医療費が1割負担で済む。そのためには、指定医療機関での診断書が必要だ。診断書は、精神科に限定されず精神障害の診断や治療をしている医師であれば精神科でなくても作成できる。
精神障害者保険福祉手帳は、精神障害者の社会復帰や自立と社会参加の支援を受けやすくするもの。公営住宅の優先入居や家賃の減額、公共交通機関の割引、税金の減額などがある。障害年金は、所得保障をすることで障害者の経済的生活支援をするものだ。
てんかん患者を診ている医師が、患者の生活を安定させようとするならこの3つの制度がメインとなる。ただし自立支援医療(精神通院)は、指定医療機関になっていないとこの制度は使えないので、指定医療機関の指定申請を都道府県にする必要がある。
患者にとっては、3つの福祉制度を活用することは、次のメリットがある。医療費が安くなることで、受診しやすくなる。医療に密接に関係する生活支援が受けられ、治療費にあてられる。治療の継続に繋がるのだ。
てんかんの発作が治療によりいい状態になっていれば、それぞれの価値観に基づく生活ができるようにする1つの手段として、こうした3つの制度を提案することが大切である。福祉制度は原則「申請主義」のため患者自身が情報を入手する必要があり、申請しなければならない。患者のQOL向上のため医師が理解を深め、患者に紹介する役割を担うことが重要だろう。(QLifePro編集部)
▼外部リンク
てんかんinfo
http://www.tenkan.info/