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熊本大 メチオニン代謝が多能性細胞の未分化維持・分化を制御することを発見

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2014年04月28日 PM03:00

ヒトES/iPS細胞におけるメチオニン代謝の役割が明らかに

熊本大学発生医学研究所の多能性幹細胞分野、白木伸明助教らの研究グループは、ES/iPS細胞といった多能性幹細胞で、その未分化能の維持および分化にメチオニン代謝が関わっていることを突き止めた。4月18日、同研究所より発表されたほか、研究成果の詳細は、「Cell Metabolism」オンライン版に同日付けで掲載されている。


(画像はプレスリリースより)

ヒト多能性幹細胞では、分化細胞とは異なる代謝プログラムが保持されており、その代謝プログラムが幹細胞の未分化維持や自己複製能などに深く関与していることが明らかとなってきている。これまでにアミノ酸代謝と幹細胞については2009年、マウスES/iPS細胞でその生存にはアミノ酸の一種であるスレオニンが欠かせないことが報告されている。しかし、ヒト多能性細胞におけるアミノ酸代謝に関する報告はなく、依然不明だった。

Sアデノシルメチオニンを介して制御、除去培養液を用いた選択的除去にも世界で初めて成功

研究グループは、ヒト多能性幹細胞であるヒトES/iPS細胞を用いた検証で、生存にはマウスの場合とは異なり、メチオニンが必須であることを突き止めた。そして、メチオニンの代謝物であるSアデノシルメチオニンを介し、ヒトES/iPS細胞の未分化維持および分化が制御されるというメカニズムも見出すことに成功したという。加えて、未分化細胞は分化した内胚葉細胞と比較し、生存にはより多くのメチオニンを必要とすることも明らかにした。

また、メチオニンを除去した培養液で未分化なヒトES/iPS細胞を培養すると、細胞内のSアデノシルメチオニン濃度が大幅に低下し、それに伴ってp53の発現上昇、ヒストンH3の4番目に位置するリジン残基のトリメチル化(H3K4me3)低下、未分化マーカーであるNanogの発現低下が生じることが確認できた。

これに続けて、ヒトES/iPS細胞がもつ代謝特性の分化誘導へ応用を試みたところ、未分化過程においてメチオニン除去後に内胚葉・中胚葉・外胚葉へそれぞれ分化誘導すると、いずれもその分化傾向が顕著に促進された。内胚葉での分化誘導過程では、メチオニン除去培養液で培養することにより、残存する未分化細胞を特異的に細胞死へ誘導し除去することにも成功、その後の肝臓分化を効率的に行うことができたそうだ。

創薬研究や再生医療の発展に寄与する成果

今回の研究を通し、これまで不明とされてきたヒトES/iPS細胞における、アミノ酸のひとつメチオニン代謝の役割が明らかとなった。また未分化細胞の、高いメチオニン代謝特性を活かし、メチオニン除去培養液を利用して未分化状態からの分化促進と、内胚葉分化過程における肝臓分化の効率化に成功した点も意義深い。

この幹細胞におけるアミノ酸代謝に関する新たな知見と、2つの新しい分化誘導方法の構築は、今後のヒトES/iPS細胞を利用した創薬研究や再生医療分野の発展に、大きく寄与するものと期待される。(紫音 裕)

▼外部リンク

熊本大学発生医学研究所 プレスリリース
http://www.imeg.kumamoto-u.ac.jp/newpress/np69.html

Methionine Metabolism Regulates Maintenance and Differentiation of Human Pluripotent Stem Cells
http://www.cell.com/cell-metabolism/abstract/

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