医療基盤研究所らと共同で
東京大学は4月11日、同大医科学研究所の倉島洋介助教と清野宏教授、独立行政法人医療基盤研究所の國澤純氏ら研究グループが過剰なビタミンAが引き起こす皮膚炎の原因解明に成功したと発表した。
同研究結果は、米科学誌「Immunity」のオンライン速報版に4月10日付で公開されている。
(画像は記者発表より)
線維芽細胞によるビタミンAの代謝などがカギ
研究グループは、マスト細胞が皮膚や肺、腸管などの組織でそれぞれ異なる特性をもつことを、マウスを用いて確認。これらの特性は、線維芽細胞注と呼ばれる結合組織を構成している細胞によって調整されていることが分かったという。
皮膚では、皮膚の線維芽細胞によってビタミンAの濃度が調節されており、過剰なビタミンAや線維芽細胞によるビタミンAを代謝する仕組みが機能しなくなった場合、マスト細胞が異常に活性化し、皮膚炎が誘導されるという。また、皮膚のマスト細胞では、マスト細胞を活性化させる受容体の発現が他の組織より少ないことも見いだしたとしている。
今回の記者発表では、過剰なビタミンAの摂取が皮膚炎を起こす事例としてイヌイットの皮膚障害を例に上げられている。高濃度のビタミンAが蓄積されたホッキョクグマの肝臓を食べるイヌイットは、皮膚障害が引き起こされることが知られており、同研究の結果は、この皮膚障害の発症メカニズムを説明できるものであるとしている。
慢性的炎症やアレルギーの予防・治療開発に期待
今回の研究により、組織ごとに異なる特性をもっているマスト細胞の活性のかく乱が、体のさまざまな部位で起こる慢性的な炎症やアレルギーの発症につながっている可能性が示された。さらなる研究により、慢性的な炎症やアレルギーに対する予防、治療法の開発されることが期待される。(紫音 裕)
▼外部リンク
東京大学 記者発表
http://www.u-tokyo.ac.jp/public/