自己の細胞由来DNAが誘導因子の1つであることが明らかに
独立行政法人理化学研究所は4月10日、自己の死細胞から放出されるDNAがアレルギー反応を引き起こす炎症性T細胞の分化を誘導することを新たに発見したと発表した。この研究結果は、理研統合生命医科学研究センター・免疫シグナル研究グループの斉藤隆グループディレクター、今西貴之研究員と、大阪大学免疫学研究フロンティアセンター、マイアミ大学、ケープタウン大学などからなる共同研究グループによるもの。4月10日付で英専門誌「Nature Communications」オンライン版に掲載された。
(画像はプレスリリースより)
アレルギーの発症には、ヘルパーT細胞の1つであるTh2細胞が重要な役割をもつことが明らかとなっているほか、抗原にさらされたことのないナイーブT細胞は、抗原に反応することでTh2細胞に分化することが分かっている。しかし、その詳細な分化メカニズムなどについては、依然解明されていなかった。
視細胞由来の核酸がT細胞を直接活性化
そこで共同研究グループは、核酸(DNA、RNA)がT細胞の機能に及ぼす影響を調査。その結果、自分の細胞由来の核酸がヒストンまたは抗菌ペプチドと複合体を形成することによって、T細胞の活性化を増強することを見いだしたという。
これまで核酸は樹状細胞など、自然免疫細胞だけに感知されると考えられていたが、T細胞を直接活性化することが分かったとしている。さらに核酸による刺激によって、ナイーブT細胞からTh2細胞への分化を強く促進することが明らかになったという。一方、Th2細胞と拮抗的な役割を果たすTh1細胞への分化は、核酸によって抑制されることも判明したとしている。
またDNAは、生体内においては感染や炎症部位などの死細胞から放出されると考えられていることから、死細胞の存在下でヘルパーT細胞の分化を解析。すると死細胞から放出されるDNAがTh2細胞への分化を促進することが明らかになったという。
細胞外DNAを標的とした治療法、予防法の開発に期待
今回の研究により、自己の細胞由来のDNAがアレルギー反応を引き起こす原因物質の1つであることが明らかとなった。これにより今後、細胞外のDNAを標的としたアレルギー疾患の治療法、および予防法の開発に発展する可能性があるという。
同様に、T細胞に特異的と思われるDNAセンサーの解明も、アレルギー疾患の予防法・治療法の開発に新たな手掛かりとして期待される。(紫音 裕)
▼外部リンク
独立行政法人理化学研究所 プレスリリース
http://www.riken.jp/pr/press/2014/
Nucleic acid sensing by T cells initiates Th2 cell differentiation
http://www.nature.com/ncomms/2014/140410/