晴れやかネットとは、セキュリティの高いインターネット回線を介しID-Link(NEC)、HumanBridge(富士通)の連携システムを活用して、地域の基幹病院が開示する様々な診療情報を、病院や診療所の医師や歯科医師、薬局の薬剤師が閲覧できるネットワーク。
2013年1月から岡山大学病院、倉敷中央病院の2施設で運用が始まったのを皮切りに参加病院が拡大。情報開示施設数は現在44病院に達し、県内の主な基幹病院はほぼ全て名を連ねている。情報閲覧施設は404施設。国の補助金を活用し、12万~15万円かかる初期導入費用や毎月の利用料を13年度中は無料にしたこともあって、短期間で全国でも有数の規模に成長した。
基幹病院と診療所の連携を想定して構築されたネットワークだが、規模の拡大に向けて昨秋に薬局の参加を承認。98薬局が参加を申し込み、3月14日から薬局薬剤師への情報開示が始まった。必要な環境整備が4月上旬までに終了し、現在は参加した全薬局で運用可能な状況にある。薬局の毎月の利用料は5000円。利用する薬剤師が1人増えるたびに1500円が上乗せされる。
情報を閲覧するにはまず、患者に説明し同意を得ることが必要になる。同意書を情報開示病院の地域連携室にFAXで送信すると、必要な処理が行われる。その上でセキュリティの高いインターネット回線であるVPN回線を接続。ブラウザを開きIDとパスワードを入力してログインすると、晴れやかネットのトップ画面に同意を得た患者名が表示される。患者名をクリックするとID-LinkやHumanBridgeの連携システムによって、時系列で各情報が閲覧できる。
閲覧可能な情報の範囲は職種別に異なる。薬局薬剤師は▽患者基本属性情報▽アレルギー▽病名▽各オーダ(処方、注射、検体検査、食事)▽検体検査結果――の情報を閲覧可能だ。カルテ情報や各種画像情報は医師しか閲覧できない。病院によって開示範囲は異なり、多くの病院は検体検査結果やアレルギー情報を薬剤師に開示しているが、半数弱の病院は病名を非開示に設定している。
既に薬局での活用事例もある。3月14日から3月末まで、岡山大学病院、国立病院機構岡山医療センター、岡山済生会総合病院など5病院における患者情報を、7薬局が利用した。
岡山県薬剤師会副会長の堀部徹氏は「まずは、参加薬局で1枚でも2枚でも同意書を取得してシステムを活用してみることが重要」と強調。「薬局薬剤師も聞き取りを行うが、病院側のアレルギー情報を閲覧できるのは大事なこと。重複投与の防止にも情報を活用できる。検査値をいかに活用するかも今後の課題になる。薬剤師が検査値を読み取れるように、研修体制を整備するのも大事」と語る。
今後は年に2回研修会を開き、晴れやかネットを活用して薬局薬剤師が医療の質や安全性向上に貢献できた成功事例を報告してもらって、各薬局での活用を促す計画だ。「薬剤師が役立つ活動を行えば、将来は情報開示の範囲が広がっていくのではないか」と堀部氏は期待している。
このほか晴れやかネットには、在宅医療に関わる様々な職種が情報を共有化する機能が新設され、3月中旬から試行が始まった。患者ごとに医師、看護師、薬剤師、ケアマネージャー、介護福祉士などの職種がグループを形成。インターネットを介して共有化した電子的なシート上に、各職種が患者の状況や課題を書き込んだり、エクセルや写真のデータを貼り付けたりして連携を促進するもの。今年度中に本格的な運用を開始する計画だ。