従来の約40分の1血液量で半日以内に診断可能
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「がん超早期診断・治療機器の総合研究開発」プロジェクトにおいて、これに取り組む国立がん研究センターと塩野義製薬株式会社らによる研究グループが、ごく微量な血液による検査で、半日以内に大腸がんの診断を可能にするという画期的な検査手法を開発、実用化に向けたさらなる研究開発をスタートさせた。
(画像はプレスリリースより)
4月8日、NEDOおよび国立がん研究センターから発表されたもので、この研究成果は英科学誌「Nature Communications」に、現地時間の4月7日付で掲載されている。
新たに開発された検査手法は、従来の約40分の1の血液量で実施可能なもの。血液中に存在するエクソソームを利用したもので、これまでは検出できなかった早期大腸がんも診断できるようになるという。
特異的抗原で特殊な抗体ビーズが発光
大腸がんの検診方法としては、便潜血検査法があるが、感度・特異度とも十分ではなく、偽陰性を示すことがある。精密検査としての大腸内視鏡検査は受診率が低いという課題があり、高精度かつ効率的で、集団検診で利用可能な検診方法の早急な開発が求められている。
研究グループは、がん細胞に特異的なタンパク質や、マイクロRNAを含むエクソソームを利用し、従来法では1日かかっていたエクソソームの検出を約1.5~3時間で可能とし、検出のために必要とされる血清量もわずか5マイクロリットルと簡便で負担の少ないものにすることができる方法を開発したという。
測定原理としては、2種類の異なる修飾が施された抗体を用いるもので、がん特異的抗原を見つけ、特殊な抗体ビーズを発光させることで検出を可能にしている。さらに、従来の血液検査では発見できない早期がんの検出に対しても、可能性があることを確認できたという。
すい臓がんやその他疾患に対する診断法としても期待
この新たな検査方法は、大腸がん検診はもちろん、早期発見の難しいすい臓がんや、がん以外の疾患に対する新たな診断法としても期待できるそうだ。ごく微量の血液で可能という点も負担が少なくメリットだが、血液だけでなく、尿や唾液などでの検査方法への応用の可能性ももっている。NEDOでは、引き続きこの研究開発を支援し、臨床現場で用いることができる小型質量分析計と組み合わせ、早期の実用化を目指していきたいとしている。(紫音 裕)
▼外部リンク
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 ニュースリリース
http://www.nedo.go.jp/news/press/
Ultra-sensitive liquid biopsy of circulating extracellular vesicles using ExoScreen
http://www.nature.com/ncomms/2014/140407/