薬用植物をめぐっては、国産生薬が264品目中97品目に限られており、安定供給に問題を抱えているのが現状。こうした課題を解消し、国内での栽培を活性化させるため、厚生労働省、農林水産省、日漢協の3者は昨年8~9月、産地側と実需側が初めて意見交換を行う場として、全国8カ所でブロック会議を実施した。
ブロック会議では、まず日漢協が栽培してほしい薬用植物の品目リストを提示。生産者側からは、「栽培した場合にどの程度コストがかかって、どの程度の金額で買ってもらえるか教えてほしい」「生薬を生産した経験はないが、漢方薬メーカーがどこまで支援してくれるのか」など、関心の高さから具体的な成果や支援内容に関する質問が飛んだ。
これに対し日漢協では、「種苗の調達、栽培技術・コスト、売り先、販売価格などの様々な課題があり、一緒に苦労しないといけない」と薬用植物の栽培が難しい事情を説明。生産者と実需者の認識に隔たりがあり、ある地域では生産者側から「情報が足りなすぎる」との声も上がったという。
日漢協生薬委員会の浅間宏志委員長は、初めて実施したブロック会議について、「生薬栽培に関してお互いが情報不足だということが分かった。課題を浮き彫りにできたことは、マッチングを開始する上で収穫が大きい。少しずつ温度差を埋めていきたい」と手応えを語る。
ブロック会議終了後に、日漢協がどの品目で栽培するかの要望書を募ったところ、11月末の締め切りで全国都道府県の7~8割の地域から計137件の要望が集まった。要望書を出した団体は、県や市町村、全国農業共同組合連合会、農業法人、個人、民間法人など様々だった。
要望書の内容については、▽栽培経験はないが、栽培していきたい▽以前に栽培経験があり、具体的な品目名を挙げて栽培したい▽現在栽培している品目があり、「収量を拡大したい、品質を高めたい」――などバラツキが見られた。「栽培する予定はないが、情報だけ欲しい」との要望もあったという。
137件のうち、45件が日漢協会員社との折衝に進んでいる。各品目でのマッチングの状況は明らかにしていない。
試作の開始時期は、品目によって春と秋で分かれるが、早ければ今春にも開始する地域もある。既に薬用植物の栽培を実施している産地については、日漢協会員社が各品目のサンプルを受領・分析した上で、その後の栽培の方向性を検討していく。
次回のブロック会議は、「春と秋に行われる試作の結果を見て判断する必要がある」として、現段階では未定。昨年11月の要望書締め切り後も問い合わせが続いており、「マッチングの仕組みを評価し、ブロック会議が現状のままでいいのかを判断したい」(浅間氏)との方針だ。
農水省では「薬用作物等地域特産作物産地確立支援事業」として、今年度に4億円の予算を計上しており、配分先を選定中。浅間氏は「試作から本格栽培、その後の検証まで事例を集積し、国内栽培の仕組みをつくっていきたい」と意欲を示す。