厚労省は、昨年から今年の初めにかけて14年度調剤報酬改定の議論を集中的に行った中央社会保険医療協議会に、特定機能病院等の大病院から長期処方された薬剤を原則として薬局が分割調剤し、2回目以降は主治医と連携して必要量を調剤する取り組みを試行的に導入する案を示していた。
ただ、複数の医師委員から、「飲み残しがあるのであれば、主治医に言って量を減らすべき」「薬剤師が法的責任を持てるのか」など、導入に慎重な意見が出たため、見送られた経緯がある。
近澤氏は、分割調剤の導入を提案した理由について、大学病院などで90日、120日といった長期処方が行われた患者が大きな袋を抱えて薬局から出てくる姿をよく目にすることに触れ、「患者のことを考えたら、大学病院でまず1週間分だけ出してもらい、近所のかかりつけ薬局で残りの部分を飲み残しがないよう薬剤師に管理、指導してもらいながら出すことが一番ではないかと思った。これこそかかりつけ薬局なので、今回、真正面から提案した」と説明した。
また、「今回の提案は、特定機能病院など大病院で処方される医薬品をターゲットにして、しかも義務化してしまおうという話。かかりつけ薬局を持っていれば恐らく、患者は自宅の近くに信頼できる薬局を見つけ出すだろうと思った」と述べ、分割調剤の導入を契機にかかりつけ薬局の拡大につなげることも狙いの一つだったことを明かした。
ただ、現状では、「自分が信頼している薬局を持っている患者はそれほど多くないのでは」とも述べ、「普段からちょっとした相談に乗れる薬局として認知される必要がある」との考えを示した。
その上で、分割調剤の導入は、中医協の答申書の附帯意見で「引き続き検討する」とされ、次回改定の宿題になっていることや、厚生労働科学研究班がまとめた「薬局の求められる機能とあるべき姿」に言及し、「そこに示されているような、気軽に足を運べる薬局になっていかなければならない」と述べた。
■18年度見据えた内容‐狭間氏
狭間研至氏(ファルコメディコ社長、日本在宅医療薬学会理事長)は、18年度に診療報酬と調剤報酬、介護報酬の同時改定、医療計画、介護保険事業計画が変わるなど、医療提供体制の大きな改革が行われることに言及。「超高齢化社会において地域包括ケアを達成できる医療体制を組むためにはどういう報酬体系になるのかを考えると、調剤薬局のあり方は大きく変わらざるを得ない」と指摘した。
その上で、「薬局の経営をどうするのかという話ではなく、この国の医療が抱える問題をどうするのかを考えると、今回の診療報酬、調剤報酬改定は非常に腑に落ちた」と述べた。