東京医科大学の小田原主任教授が講演
サノフィ株式会社は3月28日、メディアセミナー「新たな作用機序を持つ2型糖尿病治療薬 ~SGLT2阻害剤がもたらす新たな糖尿病治療の選択肢と今後の展望~」を開催。東京医科大学 内科学第三講座主任教授の小田原雅人先生が臨床データを中心に、2型糖尿病治療の新たな選択肢であるSGLT2阻害薬について展望を語った。
同セミナーは同24日、サノフィが販売承認申請を提出していた選択的SGLT2阻害剤「OSG452(一般名:トホグリフロジン水和物 販売名:アプルウェイ20mg)」が2型糖尿病を効果・効能として、厚生労働省より承認を取得したことを受けて開催されたもの。同剤はサノフィの他、興和株式会社が「デベルザ20mg」という名で販売。中外製薬株式会社が2社に対して製品供給を行う。
東京医科大学 内科学第三講座 主任教授
小田原雅人先生
高いSGLT2選択性、多剤との併用も可能
SGLT2阻害薬は、これまでの糖尿病治療薬とは作用機序がまったく異なる薬として注目を集めている。同剤は腎近位尿細管から原尿に含まれる糖を再吸収する輸送体、SGLT2(sodium glucose cotransporter 2)を阻害することで、糖の血中濃度を低下する働きがある。
「作用機序が全く違うということは、これまでのどのお薬とも併用できるということです」と小田原先生。
「SGLT2阻害薬は6製品が開発中で、そのうち4つが近々発売される予定となっています。その中でもアプルウェイはSGLT2に対する選択性が最も高い。(SGLTI1など)他のものも阻害すると色々な副作用が出る恐れがありますが、選択性を高めることで副作用を起こりにくくなっている、ということです」(小田原先生)
また「国内第2/3相試験(CSG003JP)では、プラセボ群と比較して、HbA1cを約1.0%低下させました。空腹時血糖値は約35mg/dL低下、食後は60~70mg/dL低下していました。つまり空腹時も食後も下げる効果があるということ。全体を下げながら食後をより下げる、というお薬です」と解説。
さらに特筆すべきはその体重の低下だという。「臨床データでは4%以上体重が減っているということが分かっています。この抗肥満作用は、欧米人はもちろん、肥満体型が増えている日本人にとっても、極めて優れた特性といえます」(小田原先生)
また、第3相併用試験(CSG005JP)では、すべての糖尿病経口血糖降下薬との併用試験が行われており、すでに使用されているどの薬と併用しても、0.8%ほどの追加的なHbA1c低下作用が認められたという。つまりどの薬で血糖のコントロールがうまくいかなくなったとしても血糖低下の上乗せが可能としている。
その他、国内で行われたトホグリフロジンに対する3つの試験(CSG003JP~CSG005JP)から得られた良好なデータとしては、血圧、腹囲、尿酸の低下などがあげられるという。
有害事象は体液量減少、高齢者の体重減少など
有害事象のうち、気を付けなければならないことは体液の減少であるという。「尿糖を出すということは、水が出るということ。つまり多尿になるということです。投与直後に脱水が起こることがあり、起立性低血圧などに注意が必要です」(小田原先生)
また欧米での試験においては、性器感染症や尿路感染症が増えるという結果も出ているが日本のデータではほとんど増えていないとのこと。ただし、すでに感染していることが分かっている方は発症する可能性があり、実診療上では十分に注意が必要とした。他には、ケトン体の上昇が認められたという。
前述の体重の低下は、肥満体型の人にはプラスの面としてとらえられるが「やせ形の高齢者、いわゆるサルコぺニアと呼ばれている筋肉が少ないような方には処方すべきではないかもしれません。最初は太目の方、若い方に投与する方がいいでしょう」と小田原先生。
最後に小田原先生はSGLT2阻害薬の承認について「2009年のインクレチン製剤の発売に次ぐ、大型新薬がこのSGLT2阻害薬です。まだまだ一般の方には知られていませんがこの新しい治療薬によって、糖尿病学会が設定するHbA1c 7%という目標が達成されることを期待しています」とまとめた。(QLifePro編集部)
▼外部リンク
サノフィ株式会社 プレスルーム
http://www.sanofi.co.jp/l/jp/ja/