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厚生労働省研究班、在宅医療で初の全国調査―薬剤師業務にエビデンス

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2014年04月11日 AM10:33


■日本型CDTMも視野に

薬局薬剤師が在宅訪問業務を実施することで、有害事象発見や処方変更の有無など、4項目のアウトカムが改善したことが、「地域医療における薬剤師の積極的な関与の方策に関する研究」(代表:今井博久国立保健医療科学院統括研究官)の調査で明らかになった。全国1890薬局が参加した日本初の大規模調査で、薬剤師の在宅業務に関するエビデンスが明確に示された。研究班は、薬剤師の本質的機能は処方設計と位置づけ、成果を在宅医療における日本型CDTMの実施につなげたい考えだ。

地域医療が在宅医療にシフトし、薬局薬剤師が果たす役割として、慢性疾患患者の処方設計や副作用チェック等が期待されている。ただ、これまで薬剤師が関与したことで、患者の薬物治療に変化があったかどうかのアウトカムについてはエビデンスが得られていなかった。

そこで研究班は、地域で薬剤師が在宅医療にかかわることによって、患者のアウトカムが改善することを証明するエビデンスを得るため、日本薬剤師会の会員薬局を対象に、日本で初めてとなる大規模全国調査を実施した。回収率は56・9%。

全国1890薬局から5447人の患者データが得られた。アウトカム指標としては、▽有害事象の発見と解消の有無▽アドヒアランスの変化▽残薬状況の変化▽問題の是正を意図した処方変更の有無――の4項目を検証した。

その結果、在宅訪問業務を行っている平均的な薬局は、薬剤師数3人、1日平均処方箋枚数55枚、薬剤師1人当たり1日平均処方箋枚数20枚、訪問実施薬剤師届出数2人、平均訪問患者数1カ月4人、薬剤師1人当たり訪問患者数2人と、処方箋20枚に1人の体制を確保できている実態が明らかになった。実働時間は訪問1回当たり10~20分、訪問頻度は月2回が多くを占めていた。

有害事象とアウトカムの関係を見ると、訪問患者のうち14・4%に薬剤による有害事象が発生していた。最も多かったのは催眠鎮静剤、抗不安剤、次いで精神神経用剤、その他の中枢神経系用剤と続いた。特にベンゾジアゼピン系薬に起因した有害事象として、ふらつき、眠気が高い頻度で発生しており、高齢患者の転倒や骨折リスクを高めていることが考えられた。

これら有害事象に対して、薬剤師が訪問業務を行うことにより、薬剤中止となった患者が44・2%、減薬となった患者が24・5%、薬剤変更となった患者が18・3%に見られ、88・1%の患者で有害事象が改善したことが分かった。

アドヒアランスの変化については、全く飲めていなかった患者が薬剤師の訪問開始時は4・1%だったのに対し、直近の訪問時には0・3%まで減少。指示通り飲めている患者も60・3%から83・8%まで向上した。

また、残薬の整理を行った結果、訪問開始時に比べて41・6%の患者で残薬が減少。解消された残薬の総額は692万1860円、患者1人当たりでは3964円となった。

処方変更の有無については、薬剤師が訪問先で把握した処方上の問題点を是正するため、処方変更が行われた患者の割合は37・1%であり、そのうち92・4%が漫然投与やアドヒアランス不良等が改善した。

特に医師と薬剤師が検査値に関する情報を共有している患者群では、漫然投与やアドヒアランス不良の問題を把握できた割合が高く、患者情報の共有が処方内容の適正化につながると考えられた。

これら初めての全国調査の結果から、在宅医療で薬剤師が訪問業務によって介入した場合、アウトカムが改善していたことが明らかになった。特に有害事象への対処、処方変更による高い改善効果が見られた。

研究代表者の今井氏は、「これまで在宅医療における薬剤師の業務内容はブラックボックスだったが、今回の成果はエビデンスに向けた第一歩となる。最終的には在宅医療における日本版CDTMの実施につなげたい」と話している。

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