体内時計は、ヒトから植物まで様々な生き物に備わっている働きです。哺乳類では臓器や細胞がそれぞれ体内時計に基づいて機能しています。
(この画像はイメージです)
この体内時計が、肺の慢性疾患に関係があるという初の発見が、マンチェスター大学の研究チームによって報告されました。
今回「Genes & Development」という専門誌に発表された研究では、マウスを対象に観察を行っています。人工的に肺線維症の状態にしたマウスで、活動時間と休息時間にそれぞれ肺の状態を観察したところ、活動時間の方が酸化物質によるダメージや、繊維化の進行の度合いが大きいことが分かりました。
このことから、体内時計が、肺の病気を引き起こす毒素や汚染された空気に対して、抗酸化作用で身を守る働きのスイッチをオンにしたりオフにしたりしていることが明らかになりました。マウスでは、活動時間は夜、休息時間が昼、と私たち人間とは逆のリズムをもっていますが、人間でも活動時間の方が影響を受けやすくなっていると推測できるそうです。
このことから研究チームは、肺線維症、喘息など慢性の肺の病気を抱えている人たちにとって、同じ薬でも飲む時間によってより高い効果を上げたり、症状が悪化する時間に備えた予防を行ったりできるといいます。
現在、同チームでは、交代勤務や性別、年齢といった要素が体内時計に影響するかなど、より詳細についての調査を続けています。自然の身体のリズムについての理解が進むことで、より効果的な予防や治療が行われるようになることが期待されます。(唐土 ミツル)
▼外部リンク
New research links body clocks to chronic lung diseases
http://www.manchester.ac.uk/aboutus/news/