国立遺伝学研究所が新生児大脳皮質で世界初の成功と発表
国立遺伝学研究所の形質遺伝研究部門岩里研究室研究グループは3月25日、世界で初めて新生児の大脳皮質で神経回路が成長する様子を直接観察することに成功したと発表した。この研究成果は、米科学誌「Neuron」オンライン版に現地時間3月27日付で掲載された。
(画像はプレスリリースより)
大脳皮質における複雑な神経回路は、新生児において未熟な状態から、外部のさまざまな刺激を受けて劇的な成長を遂げることが知られている。しかし、その詳細なプロセスやメカニズムに関しては、適当な観察および解析技術が存在せず、依然未解明な部分が多かった。
同研究グループでは、今回、生まれて間もないマウスの大脳皮質の神経回路を可視化する方法を開発。さらに生きたまま脳の深部までをとらえることができる二光子顕微鏡の観察技術の改良もはかり、これらを組み合わせることで、新生児大脳皮質の神経回路の成長を観察することに成功したという。
突起の激しい伸び縮みを観察、脳の発達メカニズムに迫る
この世界初の観察の結果、新生児マウスの大脳皮質における神経細胞は、樹状突起を激しく伸び縮みさせながら、結合すべき相手に向かって突起を広げていっていることが分かったという。
一方で、遺伝子操作によりNMDA型グルタミン酸受容体の働きを抑え、正しい情報を受け取ることができないようにした神経細胞では、樹状突起の伸び縮みの程度が著しく激しいものとなり、結合すべき適切な相手の有無と関係なくランダムに突起が広がっていくことが確認された。
同研究グループでは、この新しいアプローチが、新生児期からの脳の発達メカニズムの解明に大きく貢献するものとなると期待するとしている。(紫音 裕)
▼外部リンク
国立遺伝学研究所 プレスリリース
http://www.nig.ac.jp/assets/images/
NMDAR-Regulated Dynamics of Layer 4 Neuronal Dendrites during Thalamocortical Reorganization in Neonates
http://www.cell.com/neuron/abstract/S0896