運動能力と認知機能の関係を調べた研究で
熊本大学文学部認知心理学研究室は3月20日、高齢者において、速く歩くことができる人ほど記憶力が優れていることを明らかにしたと発表した。
これは、同大学院社会文化科学研究科 博士後期課程1年の川越敏和大学院生と文学部の積山薫教授が実施した高齢者の運動能力と認知機能の関係を調べた研究成果で、ドイツの脳科学雑誌「Experimental Brain Research」(オンライン版)に掲載された。
(画像はプレスリリースより)
ワーキングメモリの種類に着目
一時的な記憶の働きであるワーキングメモリは、高齢者においては急速に低下することが知られており、呈示された文字をどの程度覚えているかという音韻ワーキングメモリについては測定されていた。
今回の研究はワーキングメモリの種類に着目し、音韻ワーキングメモリに加えて人の顔を記憶する顔ワーキングメモリ、場所を記憶する空間ワーキングメモリにおける機能低下の度合いと歩行能力との関係を明らかにしたもの。
その結果、顔ワーキングメモリと空間ワーキングメモリについては歩行速度との強い相関が確認され、音韻ワーキングメモリにおいて強い結びつきは見られなかった。
また、ワーキングメモリと運動能力との強い相関は、手先の器用さでは見られず、歩行に限られていたという。このことから、早足での歩行ができる運動能力を維持することで、認知症に関連するような認知機能低下を抑制できる可能性が考えられるとしている。(小林 周)
▼外部リンク
熊本大学 プレスリリース
http://www.kumamoto-u.ac.jp/daigakujouhou/kouhou/press