■厚労省 研究班で実態調査へ
厚生労働省の「高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会」は27日、降圧剤ディオバンの臨床研究データ改ざん事件でノバルティスファーマが誇大広告で刑事告発されたことを踏まえ、医薬品等の広告規制のあり方を見直すよう国に検討を求める報告書を大筋でまとめた。これを受け、厚労省は研究班を設置し、医薬品等の広告に関する実態調査に乗り出す。欧米の事例を参考にしつつ、広告規制の見直しに向けた論点を整理していく方針だ。
報告書では、ディオバンの臨床研究データ改ざん事件のノバルティス社の関与は、人的・金銭的関与の状況等から、元社員一個人にとどまらず、「実態としてはノバルティス社として関与していたと判断すべき」と会社ぐるみの関与を断定。1月に厚労省が誇大広告を禁止した薬事法66条に違反した疑いで、ノバルティス社を刑事告発したことを踏まえ、「欧米の事例を参考にしつつ、広告の適正化方策についての検討を行うべき」と国に求めた。
これを受け、厚労省は、医薬品等の広告の実態調査に乗り出す。研究班を立ち上げ、海外の規制状況を踏まえて、日本における医薬品広告の実態を把握し、問題点等の論点を整理する。
また報告書は、今回データ改ざんが行われたディオバン臨床研究の企画立案について、「特定の医学的研究課題の解明を目的としたとは考えられない動機が認められる」と大学側研究者の問題点を指摘。本来の目的が曖昧な状況で研究を実施することにより、ノバルティス社が関与する隙を与えた可能性があるとし、「被験者保護の観点から看過できない問題」と断じた。
倫理審査委員会についてもデータ改ざんの歯止めとして機能していないこと、不正が発覚した際の大学における調査の迅速性や内容に大きなバラツキがあることを指摘。その上で、現在もなお、臨床研究データの不適切な取り扱い事例が報告されているとし、これら不正に関わった全ての研究者や製薬企業等に反省を促すと共に、事実関係の解明と社会への説明、再発防止策の徹底を求めた。
■製薬協 自社品に寄付金禁止‐研究資金は契約で実施
一方、日本製薬工業協会は、製薬企業の臨床研究支援について、研究や結果の中立性が疑われるデータ解析等の労務提供を禁止する方針を、同日の検討会で明らかにした。奨学寄付金についても、今後自社の医薬品にかかわる臨床研究への支援としての資金提供は行わない考えを表明した。
製薬協は、透明性ガイドラインの早急な実施や会員社の社内体制ガバナンスの点検等、業界の改善策を打ち出してきたが、今回、自社医薬品に関わる臨床研究への資金や物品の提供は、契約によって実施する方針を明らかにした。臨床研究のデータ解析等、研究の中立性が疑われる労務提供も禁止する。
また、ディオバン臨床研究データ改ざん事件で大きな問題となった奨学寄付金についても、自社医薬品にかかわる臨床研究への支援としての資金提供は行わない方針を表明。奨学寄付金の提供に当たっては、社内の営業部門から独立した組織で利益相反を十分確認した上で決めることとした。