2013年度厚生労働科学研究費補助金による「6年制薬剤師の輩出を踏まえた薬剤師の生涯学習プログラムに関する研究」(研究統括:乾賢一氏)の分担研究者である橋田氏が、その研究の一環として実施した調査の結果を中間報告として発表した。
高い臨床能力を備えた薬剤師を養成するため、新たな卒後臨床研修制度として14年度に薬剤師レジデントを募集する施設は39病院。11年度10病院、12年度27病院、13年度36病院と段階的に増加。14年度は淀川キリスト教病院、順天堂大学医学部附属順天堂医院、兵庫県立粒子線医療センターが新たに募集を開始する。
地域別に見た病院数は関西18、関東16、北陸・東海3、中国・四国1、九州・沖縄1、北海道・東北0。レジデント定数は関東77人、関西40人など合計130人となっている。薬剤師不足を背景に地方の病院では欠員が続く正職員枠を埋めることが先決であるため、薬剤師レジデント制度を構築する病院は都市部に集中している。
薬剤師レジデントの月額報酬は15万円以下9%、15~20万円以下29%、20~25万以下29%、25万円超6%、正規職員に準じて支給29%となっている。応募者の多くは新卒薬剤師だが、他病院の非常勤・正職員、薬局に勤務する薬剤師、製薬企業の社員、基礎分野の博士号を取得した薬剤師などもいる。
研修期間は、米国の仕組みを参考に2~3年にわたって段階的な研修プログラムを構築している病院が多く、最長5年まで研修期間の延長を認めている病院もあった。研修カリキュラムは講義研修と実務研修で構成され、中央業務だけでなく比較的早期から臨床薬剤業務に関する教育を集中的に実施している病院が多い。全病院で薬剤師レジデントは研究に関与。過半数の病院では薬学生の教育にかかわっていたという。
今後の展望として橋田氏は「薬物療法専門薬剤師という医療薬学会の制度がある。多くの病院薬剤師はこの制度のもとでスーパージェネラリストを目指す。薬剤師レジデントは、それに向けた卒後の最初のステップと位置づけてもいいのではないか」と強調した。
資格取得には、同学会の認定研修施設において規定の研修コアカリキュラムに従って5年以上の研修を受ける必要がある。薬剤師レジデントは、濃い内容の研修を受けていることを背景に橋田氏は「薬物療法専門薬剤師養成研修としてふさわしい研修プログラムであるとレジデント制度が認められた場合は、資格要件の5年を短縮していただきたいと提案していきたい」と話した。
また、現在は各病院がそれぞれ独自の研修カリキュラムを構築しているが、研修カリキュラムの質の担保のため第三者機関によるプログラム認証が実施される必要があると報告。「薬物療法専門薬剤師のコアカリキュラムをもとに、臨床能力を身につけるための到達目標を明確にし、評価基準を設けることによって、カリキュラムの質を担保した研修プログラムを構築できる」と説明した。
このほか、▽現在は個々の病院や提携薬系大学の自助努力で薬剤師レジデント制度の財源を確保しているが、一定の認証を受けた研修プログラムに対する公的助成が検討されることが望まれる▽学会や職能団体、行政をも含めた新たな議論の場を設けることが課題を解決する糸口になる――などと指摘した。