培養ヒト角膜内皮細胞移植による水疱性角膜症治療
京都府立医科大学は3月12日、世界で初めて水疱性角膜症に対する培養ヒト角膜内皮細胞の移植を実施したと発表した。
これは京都府立医科大学視覚機能再生外科学の木下茂教授らと、同志社大学生命医科学部、滋賀医科大学動物生命科学研究センターらによる共同研究の成果。現在までに、3例の臨床研究を実施し、この培養細胞注入療法の安全性を確認すると同時に、角膜の透明化や視力改善等の有効性も確認している。
(画像はwikiメディアより引用)
Rhoキナーゼ阻害剤がカギ
研究グループは、臨床応用を可能とする安定で安全な高品質ヒト角膜内皮細胞の培養法を創出し、水疱性角膜症モデル動物を用いた非臨床研究で、概念実証を獲得している。さらに、ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会の承認を得、さらに再生医療の実現化ハイウェイの課題運営委員会等の意見を反映させて臨床研究を実施したという。
研究では、角膜内皮細胞をRhoキナーゼ(ROCK)阻害剤によって効率に培養できることを発見。さらにROCK阻害剤が生体内で角膜内皮細胞の接着を促進することを利用し、キャリアなしで眼内に培養細胞を注入することで移植できることを発案、その安全性と有効性を、ウサギ水疱性角膜症モデルで確認したという。
京都府立医科大学は、平成24年12月にヒト幹細胞臨床研究「水疱性角膜症に対する培養ヒト角膜内皮細胞移植」の実施を厚生労働省に申請。平成25年3月に許可を受け、同年12月から京都府立医科大学附属病院眼科にて臨床研究を開始した。この成果は、体性幹細胞を用いた細胞注入療法による組織形成を実現した初めてのものであり、眼科領域だけでなく、今後の再生医療にもつながる実績である。(長澤 直)
▼外部リンク
京都府立医科大学 プレスリリース
http://www.kpu-m.ac.jp/doc/news/2014/