長崎大の研究グループらが存在を発見
長崎大学は3月7日、同大医歯薬学総合研究科 口腔分子生化学分野の根本優子准教授、根本孝幸教授らは、同研究科口腔病原微生物学分野、岩手医科大学および日本歯科大学との共同研究により、歯周病細菌のPorphyromonas gingivalisにおいて、原核生物では初めてとなるセリンペプチダーゼ5(Dipeptidyl-peptidase 5、以下「DPP5」)の存在を発見したと発表した。この研究成果は、2月28日号の「The Journal of Biological Chemistry」に掲載されている。
慢性歯周病の原因菌とされる嫌気性グラム陰性桿菌P. gingivalisは、アミノ酸を代謝してエネルギーを産生する。また、アミノ酸代謝の最終産物である酪酸は、宿主細胞を傷害して歯周病発症を促すとみられているほか、制御系T細胞への分化誘導に関わるとの報告もあり、同菌によるペプチド分解・代謝系の解明が重要視されている。これまでの研究では、DPP4、DPP7、DPP11と3種類のDPPが報告されているが、今回研究グループは、第4のDPPとなるDPP5の同定に成功したという。
(この画像はイメージです)
真菌類のみならず、真性細菌、古細菌などでも分布の可能性、ペプチド代謝機構解明に光
まず研究グループは、既知のDPP遺伝子を同時破壊したP. gingivalis株を作成し、残存DPP活性について検討を行った。すると、既知の活性の大幅な減弱が確認された一方で、Met-Leu-、Lys-Ala-などの分解活性が残っていることが分かったという。
そして、ゲノム情報からDPP4と同じS9ファミリーに属する複数の未知遺伝子を見出し、それらの翻訳産物について検証した結果、そのうちの1つが、従来一部の真核生物種で報告されていたDPP5のホモログであると判明したそうだ。さらにアミノ酸配列を比較したところ、DPP5は真菌類のみならず、真性細菌、古細菌、高等動植物にも広く分布する可能性があることも突き止めた。DPP5はこれらの生物種において、アミノ酸代謝機能に関与するだけでなく、生理活性ペプチドの活性修飾にも関わっている可能性があるとみられている。
同定したDPP5の基質特異性に関し詳細な検討を行ったところ、DPP7同様P1位置としてAlaと疎水性アミノ酸を好むが、P2位置には選択性がないという異なった特徴があり、これが対応するペプチド配列のレパートリーを広げていることが分かったという。
また、RgpとKgpの2種類のジンジパインもジペプチド産生能を有することが判明し、P. gingivalisでは4種類のDPPとジンジパインにより、ほぼすべてのジペプチド分解が可能であることが示唆された。
加えて今回の研究結果から、DPP5は主に内膜と外膜間のペリプラズムに局在し、内膜に存在するペプチドトランスポーターと連携することにより、ペプチドの円滑な代謝および輸送を実現していると推定されている。研究成果は多くの真性細菌、古細菌におけるペプチド代謝機構の解明に貢献するものであり、今後のさらなる研究進展と応用が期待される。(紫音 裕)
▼外部リンク
長崎大学 プレスリリース
http://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/about/info/science/
Identification and Characterization of Prokaryotic Dipeptidyl-peptidase 5 from Porphyromonas gingivalis
http://www.jbc.org/content/289/9/5436.abstract