よく似た膜たんぱく質CmABCB1を発見
京都大学は3月4日、薬学研究科の加藤博章教授、物質-細胞システム拠点の植田和光教授、科学研究所の平竹潤教授、東京大学理学系研究科の菅裕明教授らの研究グループが、がん化学療法の障害となっているABC多剤排出トランスポーターとよく似た膜たんぱく質「CmABCB1」を発見し、その分子構造と多剤排出メカニズムを解明したことを発表した。
(画像はプレスリリースより)
ABCB1の多剤排出ががん化学障害の障害に
細胞膜の内外の物質輸送を行うトランスポーターでもとくに有名なABCB1は、小腸や血液脳関門、肝臓、腎臓に多く存在し、外から侵入する異物から生体を守る働きをする。
一方、最初の抗がん剤で残ったがん細胞がABCB1を多数作ることによって多様な抗がん剤に耐性を獲得し、化学療法の障害となる。
X線結晶構造解析で仕組みを解明
研究グループは、高温に棲む生物からこのABCB1と性質のよく似た分子を探すことにし、シゾン(Cyanidioschyzon merolae)という温泉に棲む真核生物からABCB1と遺伝子配列のよく似たCmABCB1を発見したという。
さらに、X線結晶構造解析の手法を用いて多様な化学構造の分子を排出する仕組みを、原子レベルで解明したとしている。
今回、明らかとなった情報は、薬の設計合成や薬物治療の改良に役立つものと期待されるという。同研究チームは今後、CmABCB1の作用に伴う動きの全貌を解明し、ABC多剤排出トランスポーターの仕組みと弱点を詳しく解明する予定。また、CmABCB1で判明したことが、ヒトABCB1 についても当てはまるかどうかを研究するとしている。(小林 周)
▼外部リンク
京都大学 プレスリリース
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2013_1/2013_1/