肥満は現代の健康上の問題として、世界各国でも認識されています。特に、病的な肥満を抱える人たちに対しては、数十年前から減量手術が行われるようになっています。これは、胃や腸などの消化器官の一部に「バイパス」を作り、食べたものが吸収される割合を下げる仕組みを作る手術です。手術前と同じ量を食べても、吸収される量が少ないので、体重が減るというわけです。
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この手術は、時間と共に一般の人にも受け入れられてきましたが、手術を受けた人が全員、健康に、幸せに暮らしているわけではないようです。目的である「減量」は達成できていましたが、ノルウェーの研究者が、22人の減量手術経験者の女性に、じっくりとインタビューを行った結果、さまざまな問題が浮き彫りになってきました。
22人のうち5人は、手術後にお腹のトラブルが増えたため、手術を受ける前よりも、自分の健康度に対する満足度が下がってしまったとしています。中には、消化器官のトラブルのために、新たな手術を必要とした人もいました。
外見に悩む人も少なくありません。多くの人が、皮膚のたるみに頭を抱えているそうです。手術前には、たるみは一時的なことで、運動などを行いながら、時間が経過するのを待てば、自然に改善すると説明されている人もいました。けれども、術後のたるみは並大抵のことでは改善せず、皮膚の一部を切り取る手術をする人もいたそうです。これは、見た目のこともあるので、女性としては受け入れがたいとする人も多かったとのことです。
この調査は、減量手術を受けた人たちの気持ちを詳細に追跡した、非常に希少な報告であるとされています。「減量」という問題は解決できても、身体と心の健康の維持としては、まだまだ改善の余地があるようです。今回明らかになった経験者の声が、今後の改善に活かされることが望まれますね。(唐土 ミツル)
▼外部リンク
Weight loss surgery increases social acceptance, but body remains problematic
http://eng.kilden.forskningsradet.no/