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自治医科大 薬物依存の神経機序を発見

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2014年03月04日 AM06:01

繰り返しの薬物使用が興奮性に転換

自治医科大学は2月21日、同大学医学部統合生理学部門の矢田俊彦教授らの研究グループが、薬物の繰り返しの使用がドーパミン神経細胞に対して興奮性に転換し、ドーパミン亢進を介して薬物依存や統合失調症様症状を誘導することを発見したと発表した。

(画像はwikiメディアより引用)

この研究は、文部科学省脳科学研究戦略推進プログラムの一環として化学研究費補助金などの助成を受けて行われたもので、研究成果はアメリカの科学雑誌「Neuroscience Letters」に掲載された。

ラットによる研究で発見

薬物乱用や依存と、それらによる心身の健康障害は世界的な難問となっている。麻酔作用を持つ幻覚剤の一種であるフェンサイクリジン(PCP)は、幻覚や妄想、精神錯乱などを誘発して、統合失調症と類似した症状を呈し、繰り返し使用すると依存を起こす原因になるとされる。これらの作用には、神経物質ドーパミンが関与していると示唆されていたが、その機序の詳細は不明だった。

同研究グループは、代表的なドーパミン産生部位である中脳の腹側被蓋野(VTA)から神経細胞を単離し、細胞内カルシウム濃度を測定して、細胞活動を計測したという。さらに、PCPの作用を観察した後、免疫染色によりドーパミン細胞を同定した。

その結果、正常ラットのドーパミン神経細胞は興奮性神経伝達物質グルタミン酸に対して興奮応答を示し、PCP(急性)添加はこれを抑制した。これに対し7日間にわたりPCP連日(慢性)投与したラットのドーパミン神経細胞においてPCP(急性)添加は、グルタミン酸応答を著しく増強した。また、この増強効果はPCP連日投与を中止した7日後のラットの神経細胞においても同様にみられたという。

薬物依存が回復しにくい神経メカニズム

この研究成果は、PCPのドーパミン神経細胞に対する急性作用は本来抑制性であるが、PCP慢性投与により興奮性に転換し、その効果は薬物中止後も長期間持続することを示したものである。プレスリリースでは、

本薬物が、繰り返し使用の結果、ドーパミン神経細胞に対して興奮性に転換し、ドーパミン亢進を介して薬物依存や統合失調症様症状を誘導する機序を示しています。また、ドーパミン神経細胞の興奮性へのシフトが一旦起こると容易に元に戻らない性質は、薬物依存からの回復を困難にしている神経メカニズムとして注目されます。併せて、統合失調症の発症、病態に関わる神経機序の解明にも繋がる可能性が考えられます。(自治医科大学 プレスリリースより引用)

と述べられている。(小林 周)

▼外部リンク

自治医科大学 プレスリリース
http://www.jichi.ac.jp/news/research/2013/

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