■徳島文理大香川薬学部飯原氏ら
日本の25歳以上の外来患者のうち7割に、運転等禁止・注意医薬品が投与されていることが、徳島文理大学香川薬学部教授の飯原なおみ氏らの研究グループの調査によって明らかになった。交通事故を招く要因になり得ることから、多くの患者に対して注意喚起が必要としている。大規模なデータベースを解析して、同医薬品の使用実態が分かったのは初めて。
飯原氏らは、添付文書に注意喚起が記載された運転等禁止医薬品172成分、運転等注意医薬品290成分を対象に、外来患者での使用実態を調べた。
医薬品が投与された25 歳以上の外来患者約56万7000人の73%に、運転等禁止医薬品、運転等注意医薬品のうち1剤以上が投与されていた。運転等禁止医薬品は対象患者の43%に、運転等注意医薬品は54%に投与されていることが分かった。
運転等禁止医薬品に限定すると、25~74歳では35~45%の患者に、75歳以上の後期高齢者では50%の患者に投与されていた。
飯原氏らは「医薬品を交付する大半の患者に注意喚起が必要であることを示し、ほぼ半数の患者には運転の禁止を説く必要があることを示した」としている。
この結果は、運転等禁止・注意医薬品服用患者の交通事故発生比率を明らかにしたり、それに伴う社会的な費用負担増などを調べたりするための基礎的なデータとしても役立つという。
飯原氏らは、2010年から学術研究に対する活用が試行的に始まった、日本国民のレセプト情報データベース(NDB) のデータセットを用いて解析した。これは、11年10月の1カ月分の「医科入院外レセプト」に、同年10、11月の「調剤レセプト」が患者氏名でひも付けされたデータから、性別、年齢の構成比率が保持されたまま、その1%を抽出したもの。日本の1カ月の外来患者に対する1%の標本と位置づけられる。
大規模なデータベースが存在しなかった日本では、これまで複数の医療機関を対象に、運転等禁止・注意医薬品の使用実態を評価した報告は存在しなかった。わずか1%分の患者データとはいえ、このデータセットは「日本の医療の縮図とも言えるデータであることが分かった」(飯原氏)という。NDBを活用した研究はまだ始まったばかり。医学や薬学など様々な観点から解析できる可能性があり、先行してその有用性を示したことにも大きな意味がある。
このほか飯原氏らは今回の研究で、薬物の代謝や排泄能力が低下する高齢者において、用量が低減されているのかどうか、用量制限が遵守されているかどうかも併せて調査した。
運転等禁止・注意医薬品の内服薬における高齢者の1日用量は、中枢神経系用薬では青年者より概ね低下していたが、睡眠薬の用量低下幅は他の中枢神経系用薬に比べて小さかった。降圧薬や抗アレルギー薬においては、用量は年齢の影響をほとんど受けていなかった。
また、運転等禁止・注意医薬品70成分における用量制限は、大部分の患者で遵守されていたが、高齢者において用量制限や禁忌とされている医薬品や睡眠薬においては、多数の患者で制限用量の超過が認められた。なかには75歳以上の患者に2倍量を超えて処方されるケースもあったという。