■認定薬剤師育成や相談事業など
公益性のある事業を展開する一般社団法人日本薬業育成会が運営する「きらめき薬局」(大阪市中央区)が10日、オープンした。同薬局は認定薬剤師の育成と患者のプライバシーへの配慮を運営理念とする。保険薬局が病院と連携して認定薬剤師育成を目指すのは全国でもほとんど例がない。将来的には、周りの薬局の薬剤師研修も受け持ち、地域で様々な認定薬剤師を増やしていく構想を持っている。一方、患者のプライバシー保護では、HIV患者らへの服薬指導を目的とした「お薬相談個室」を設置しており、今後のきらめき薬局の調剤業務を通じた地域医療への貢献が注目される。
日本薬業育成会が保険薬局の認定薬剤師育成を目指す理由を滝野肇同会事務局長(理事)は、「在宅医療が増加していく中、保険薬局での専門知識を有した薬剤師を育成することで、地域医療において院内薬局と同様のサービス提供が可能になる」と説明する。さらに、「保険薬局の機能を上げることが、病院の負担軽減にもつながる」と話す。
きらめき薬局では、近隣の大阪医療センターとのさらなる連携を深めて、「将来的に、癌や糖尿病などの認定薬剤師育成施設として機能させる構想」(滝野氏)を打ち出している。
実際、同薬局では、管理薬剤師の中村美紀氏がHIV感染症薬物療法認定薬剤師として活躍している。中村氏は、以前所属していた法円坂薬局で調剤業務に従事する傍ら、大阪医療センターで病院の研修を受け同認定薬剤師を取得した。
現在、HIV感染症専門薬剤師にもトライ中で、既に認定条件である筆記試験、学会でのオーラル発表回数をクリア。今年3月に行われる論文審査結果によって認定の可否が決定する段階にある。
中村氏は自らの経験を踏まえて、「認定薬剤師制度にトライするには、病院での臨床経験が必要となるため、薬局と病院の連携は不可欠である」と強調する。在宅医療の進展に伴って保険薬局でも薬剤師の高い専門性が求められる中、きらめき薬局では、近々、癌の認定薬剤師の採用も予定している。
一方、患者のプライバシー保護を目的に服薬指導を展開している「お薬相談個室」でも、中村氏がHIV患者の服薬指導を受け持っているのは言うまでもない。
「HIV患者さんは特にプライバシーに配慮する必要があるので、希望されれば優先的にお薬相談個室を利用している」と説明する中村氏。さらに、「HIVでは、基本的に服薬アドヒアランスが低下している患者さんが多く、徹底した服薬指導が必要になる」と話す。
代表理事の城尾秀和氏も「HIVは、今でも薬剤の選択肢が少ない。患者さんの服薬コンプライアンスが長期的に低くなれば、使っている薬剤に耐性が生じて、薬剤の切り替えが必要となる」と指摘する。その上で、「薬剤師は、服薬アドヒアランスの低下で薬剤の選択肢がより狭まることのないように、留意して患者を指導しなければならない」と重ねて服薬指導の重要性を説く。
このように、お薬相談個室の開設は、患者のプライバシーの保護のみならず、服薬アドヒアランスの向上にもつながっており、同薬局が目指す「地域住民および患者と共に創る安全かつ安心の調剤業務実現」の一翼を担っている。