老化因子p53が糖尿病の病態に関与
京都府立医科大学は2月11日、同大の星野温研修員、的場聖明助教らが、糖尿病モデルマウスを用いた膵臓のβ細胞において、老化因子であるp53がオートファジーによる不良ミトコンドリアの分解処理(マイトファジー)を阻害し、ミトコンドリア機能不全を進行させることが糖尿病の病態に関与していることを明らかにしたと発表した。
これは、マイトファジーによるミトコンドリアの機能維持が糖尿病の新たな治療標的となる可能性を示した画期的な成果だという。研究結果は、「米国科学アカデミー紀要」オンライン速報版で公開されている。
(画像はプレスリリースより)
マイトファジー誘導因子Parkinと結合
同研究グループは、糖尿病モデルマウスや膵β細胞株を用いた実験において、老化因子p53がマイトファジーを障害し、膵臓β細胞のミトコンドリア機能低下を引き起こすため、インスリン分泌障害が生じ、糖尿病に至るという新規メカニズムを初めて発見。さらに、小胞体ストレスや酸化ストレスにより増加した細胞質のp53がマイトファジー誘導因子であるParkinと結合。これがマイトファジーを阻害するということを明らかにしたという。また、p53を欠失したマウスやp53阻害薬を投与されたマウスでは、糖尿病の発症抑制や改善が認められたという。
糖尿病治療の新たな戦略となるか
今回の研究により、糖尿病において膵β細胞のミトコンドリア機能維持機構であるマイトファジーがうまく働かなくなるメカニズムが明らかとなった。これにより今後、老化因子p53の阻害や、より直接的な方法でマイトファジーを活性化する薬剤の開発が進み、糖尿病治療の新たな戦略となることが期待できるとしている。(伊藤海)
▼外部リンク
京都府立医科大学 プレスリリース
http://www.kpu-m.ac.jp/doc/news/2014/files/