長鎖ノンコーティングRNAが関与
東京大学は2月7日、同大アイソトープ総合センターの秋光信佳准教授らの研究グループが、ウイルス感染と戦うための自然免疫応答を制御する新たな生体分子を発見し、その機能を解明したと発表した。
発見された生体分子は、タンパク質へ翻訳されない特殊なRNA分子の「長鎖ノンコーティングRNA」。ヒトには、数万種類の長鎖ノンコーティングRNAが存在すると言われるが、それらの機能については、これまでほとんど解明されていなかった。今回の発見により、この長鎖ノンコーディングRNAが自然免疫応答のスイッチ分子として働くことを世界に先駆けて示したという。
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NEAT1の誘導から始まるサイトカイン分子の大量生産
同研究グループは、最新の分子生物学的手法、分子イメージング技術、バイオインフォマティックスを縦横に駆使。まず、ウイルスに感染するとそれが刺激となって、ノンコーディングRNAの「NEAT1」が誘導されることを明かした。
続いて誘導されたNEAT1が転写を抑制する働きをもつタンパク質SFPQを吸着。その働きを阻害することを示したという。そしてSFPQの働きが阻害された結果、サイトカイン分子を指令するメッセンジャーRNAの転写反応が促進、サイトカイン分子の大量生産が引き起こされ、その結果、自然免疫活性が高まることを見いだしたとしている。
花粉症、リウマチなどの治療法、治療薬開発に期待
今回の研究成果は、免疫の仕組みを解明する突破口と可能性を秘めており、インフルエンザウイルス薬などを開発するための標的分子を提供できることから、医薬品開発などに波及効果が期待できるという。
同研究グループは今後、自然免疫応答に関わるノンコーディングRNAを網羅的に探索し、免疫を調節する仕組みの解明を目指すという。そして、ウイルス感染防御のみならず、花粉症などアレルギーやリウマチなどの自己免疫疾患の起きる分子機構を解明し、治療法開発や治療薬開発に貢献するとしている。(鈴木ミホ)
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東京大学 広報・情報公開
http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_260207