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名大ら 緑膿菌に対する新作用機構の増殖阻害人工タンパク質を開発

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2014年02月18日 AM06:00

多剤耐性菌による院内感染で問題となっている緑膿菌に新発見

名古屋大学大学院理学研究科物質理学専攻、理化学研究所播磨事業所、山口大学農学部の研究グループは2月5日、緑膿菌に対する新しい作用機構をもつ増殖阻害人工タンパク質を開発したと発表した。緑膿菌が分泌する鉄獲得タンパク質の標的誤認識を利用したもので、抗生物質などを利用しなくとも緑膿菌の増殖を阻害することができるという。この研究成果は、ドイツ化学会誌である「Angewandte Chemie International Edition」オンライン版に掲載された。

緑膿菌は多剤耐性菌の出現により、院内感染が社会問題となっており、医療現場において多剤耐性緑膿菌を殺菌する新手法の開発が待望されている。体内に感染した緑膿菌は、不足する鉄分を得るために、ヘム鉄の獲得を目的とするヘム鉄獲得タンパク質(HasA)を分泌し、赤血球中のヘモグロビンに含まれているヘム鉄を奪い取って利用するシステムをもっているとされる。

同研究グループは、この緑膿菌が分泌するヘム鉄獲得タンパク質のHasAに着目。ヘム鉄とは構造が異なる平面型の合成金属錯体を添加する実験を行ったところ、ヘム鉄と誤認して捕捉してしまう性質があることを発見した。

(画像はプレスリリースより)

誤認捕捉させた「偽のHasA」で鉄の供給を遮断、殺菌を可能に

次に同研究グループは、この平面型の合成金属錯体を結合したHasAの結晶化に成功し、理化学研究所播磨事業所スプリング8の理研構造ゲノムビームラインにおいて、結晶構造解析を実施し、その構造を原子レベルで調査した。

すると、平面型の合成金属錯体を捕捉したHasAの構造は、本来の標的であるヘム鉄を捕捉したものの構造と、外観上ほとんど変わらないということが見出されたという。

そこで、大型で疎水性の高い合成金属錯体である鉄フタロシアニンを結合したHasAを「偽のHasA」として作成し、生きている緑膿菌に微小量添加したところ、緑膿菌の増殖を阻害することに成功したそうだ。

これは緑膿菌の外膜に存在するHasAのレセプタータンパク質のHasRが、鉄フタロシアニンを結合した「偽のHasA」と、ヘム鉄を結合した「本物のHasA」を区別することができず、「偽のHasA」によってHasRの取りこみ口が塞がれてしまうために、緑膿菌にとって不可欠な鉄分の供給が遮断され、結果として緑膿菌が増殖できなくなったものと考えられている。

多剤耐性菌を殺菌するための新たな抗生物質の開発は盛んに行われているが、細菌もまたすぐに抗生物質を排出する手法を獲得するなどし、耐性化してしまうため、現在はまさに“イタチごっこ”といえる状況が続いているという。全ての抗生物質が効かない多剤耐性菌の出現も現実味を帯びてきており、抗生物質とは作用機構が異なる殺菌方法の開発は、現代医学にとって欠かせないものといえる。

そうしたなかでの今回の研究成果は、鉄フタロシアニン結合型HasAによる緑膿菌の増殖阻害という、全く新しい抗生物質を一切用いることのない方法で、緑膿菌の増殖を防ぐことが可能であることを示したものであり、新規多剤耐性緑膿菌の殺菌方法を開発する道を拓いた重要な知見であるとみられている。(紫音 裕)

▼外部リンク

名古屋大学 プレスリリース
http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/

Inhibition of Heme Uptake in Pseudomonas aeruginosa by its Hemophore (HasAp) Bound to Synthetic Metal Complexes
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/

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