■基本料の特例ルール拡大
中央社会保険医療協議会は12日、2014年度の診療報酬改定案をまとめ、田村憲久厚生労働相に答申した。4月からの消費増税に伴う仕入れコスト負担増を緩和するため、薬局の大きな収入源となっている「調剤基本料」に1点を上乗せして41点、その特例を25点に引き上げる一方で、門前薬局については調剤報酬の適正化を図る方針を打ち出した。調剤基本料が通常の点数より低くなる特例ルールの対象を広げると共に、医薬品取引の妥結率が低い薬局の基本料を減算するルールを新たに導入する。医療機関の機能分化を促進するため、複数の慢性疾患がある患者を診療所などの医師が診る“主治医機能”を評価する「地域包括診療料」(1503点)も新設した。算定要件に服薬管理や健康管理などに対応することを盛り込んでいる。
(2面に関連記事)
■妥結率50%以下は減算
消費税対応では、調剤基本料の引き上げと共に、個別項目への対応として、現行で投与日数に応じて30点と270点の2段階評価になっている「一包化加算」を32点、290点に引き上げる。
また、「無菌製剤処理加算」の評価対象薬剤に医療用麻薬(65点、うち消費税対応分として10点を上乗せ)を新たに追加すると共に、現行で40点の「中心静脈栄養法輸液」を65点(+10点)、50点の「抗悪性腫瘍剤」を75点(+10点)に引き上げる。
技術と時間を要する乳幼児用の無菌製剤処理の評価も新設。中心静脈栄養法輸液を130点(+20点)、抗悪性腫瘍剤140点(+20点)、麻薬130点(+20点)に設定した。
門前薬局の調剤報酬適正化では、25点の調剤基本料の特例について、「処方箋の受付回数が月に4000回以上、特定の医療機関からの処方箋集中率が70%以上」の現行要件を残したまま、新たに「2500回以上、集中率90%以上」の要件を設け、対象となる薬局の範囲を広げた。
ただ、休日・夜間の調剤などに対応するため24時間開局している薬局は、新基準に該当しても通常の41点を算定できる。
25点を算定している薬局は全薬局の約1%とされているが、今回の見直しによって、厚労省は約3%に広がるとの見方を示している。
妥結率により、医療機関(許可病床200床以上の病院)と薬局の基本料も見直す。毎年9月末日までに妥結率が50%を超えない医療機関は、消費税対応分を含む初診料282点が209点、外来診療料73点が54点、再診料72点が53点にそれぞれ減算される。薬局は、調剤基本料41点が31点、その特例25点が19点に引き下がる。
いずれも、基本料が25%減算される点数設定となっており、減算期間については「10月1日から1年間のクールで考えている」(厚労省)という。
現行は3段階の加算で評価している「後発医薬品調剤体制加算」については、要件の調剤数量割合を引き上げて厚労省のロードマップの新指標に変更した上で、18点の加算1(新指標の数量シェアで55%以上)、22点の加算2(同65%以上)の2段階で評価する。ロードマップでは、5年後の3月までに「60%」の目標を掲げているため、ハードルは高くなりそうだ。
調剤と在宅業務が24時間可能な体制を整えている薬局を評価する「基準調剤加算」については、近隣の薬局と連携した場合に算定できる「基準調剤加算1」を現行の10点から12点に引き上げ、自局単独で同様の体制を整えた場合の「基準調剤加算2」(36点)を新設した。
■在宅薬剤管理見直し
「在宅患者訪問薬剤管理指導料」については、、在宅医療を担う薬局を確保すると共に、質の高い在宅医療を提供していくため、薬剤師1人につき1日に5回に限って算定することを要件とし、同一建物居住者以外の評価を引き上げ、同一建物居住者の評価を引き下げる。
在宅患者訪問薬剤管理指導料については、同一建物以外の場合の点数を現行の500点から650点に引き上げ、高い点数を設定。同一建物については、現行の350点から300点に引き下げた。また、質の高い在宅業務を行う観点から、「薬剤師1人につき1日に5回に限り算定する」ことを要件とし、算定の限度を設けた。
お薬手帳を必ずしも必要としない患者への評価も見直す。現行で41点の薬剤服用歴管理指導料において、手帳を交付しない場合に34点の低い点数を新たに設けた。
また、残薬の確認と後発品の使用に関する患者の意向の確認のタイミングについては、調剤を終えた後ではなく調剤を行う前の処方箋受付時とするよう見直すこととした。
薬剤師の病棟業務を評価する「病棟薬剤業務実施加算」については、療養病棟・精神病棟での4週間制限を8週間に緩和することになった。
■主治医機能を評価
「地域包括診療料」は、診療所と200床未満の病院が算定の対象となる。高血圧症、糖尿病、脂質異常症、認知症の4疾患のうち、二つ以上を有する患者に、服薬指導や生活管理のほか、在宅医療などを行うことが要件となる。
「主治医機能」の評価を想定しているが、複数の医師で当たることも可能。ただ、他の医療機関での患者の服薬状況の把握や24時間対応も求められるため、ハードルは高い。
癌領域では、「がん患者カウンセリング料」の名称を「がん患者指導管理料」に変更し、薬剤師が行う抗悪性腫瘍剤の副作用等の指導管理の評価を新設する。3年以上化学療法に従事した経験のある薬剤師が、抗悪性腫瘍剤の投与や注射の必要性などについて文書で説明した場合、200点を算定できる。
■地域包括ケア重点の改定‐田村厚労相
中医協の答申を受けて会見した田村憲久厚生労働相は、今回の診療報酬改定について、医療・介護サービス提供体制の改革に充てる904億円の新たな基金と合わせ、「主治医機能を強化する中で、地域包括ケアという一つの大きな要を作るということに重きを置いた改定内容になった」とした上で、団塊の世代が75歳以上になり、超高齢化を迎える2025年度に向けて、「受け皿の整備がスタートした」との認識を示した。また、基金については「今回だけで終わるものではない。これからも予算要求していかなければならない」とした。
今回の改定では、4月からの消費増税に伴う医療機関の仕入れコスト負担増への補填として、診療報酬や調剤報酬の基本料に点数を上乗せするなどの対応をとったが、15年10月に消費税が10%に引き上げられた場合の対応については、「抜本的な仕組みを考えていくべき」とした。
その上で、「関係者としっかり話し合いをしながら、医療機関の損税が生じないような形で対応してもらえるような制度を作っていかなければならない」と述べた。