京都府立医大病院は、検査値表示を開始するに当たって京大病院の院外処方箋様式に足並みを揃えた。薬局薬剤師の混乱を未然に防止し、検査値データをより活用してもらいやすくするためだ。院外処方箋をA4縦型に変更し、検査値をその最下部に表示するようにした。
表示する検査項目も京大病院と全く同じだ。腎機能を示す推算GFR、血糖コントロールの指標となる糖化ヘモグロビン(HbA1c)のほか、白血球数、血色素量、血小板数、プロトロンビン時間、アスパラギン酸アミノ酸トランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、総ビリルビン、血清クレアチニン、クレアチンキナーゼ、C‐反応性蛋白(CRP)、カリウム――の計13項目を表示する。
3カ月以内に実施した検査のうち最新の数値を載せる。3カ月以上前の数値は掲載しない。参考情報として同院薬剤部のウェブサイトに、同院の臨床検査基準値を掲載している。
同院薬剤部長の四方敬介氏は検査値表示を開始した狙いについて「患者さんに安心、安全な薬物療法を提供できるように検査値を表示し、年齢や腎機能に応じた投与量、薬剤の選択、副作用の発現などを薬局薬剤師にチェックしてもらいたい」と強調する。
同院薬剤部は院外処方箋の監査は行っていない。そのチェックを薬局薬剤師が行うのが医薬分業の目的だとし、「薬局薬剤師には本来の責任をしっかり果たしてもらえるようになる。病院薬剤師にも言えるが、薬局薬剤師の力はまだ十分に活用されていない。今後その能力がもっと活用されるような、それに向けたきっかけになればいい」と四方氏は話す。
同院の外来処方箋発行枚数は1日約1000枚。院外発行率は約94%。門前の4薬局に加え、面に広く分散している。京大病院と京都府立医大病院は約1kmと近い距離にあり、地域薬局への影響は大きい。薬局薬剤師には昨年12月に告知したほか、検査値の読み方を解説する研修会を実施し、約100人の薬剤師が集まった。
この取り組みは同院薬剤部の発案で実現した。院外処方箋と同じ用紙に検査値を掲載している福井大学病院の取り組みを参考に、1年以上前から検査値表示の実現を院内で働きかけてきた。医師や経営幹部から前向きな意見が得られ、目立った反論はなかったという。
プライバシーの確保を懸念する意見に配慮して、医師の操作によって検査値を表示させない機能を加えた上で、電子カルテ更新のタイミングに合わせて院外処方箋様式の変更に踏み切った。
横型A4用紙の左半分に印刷していた院外処方箋を、A4縦型サイズに変更。広がったスペースを使って検査値を表示したほか、▽1回量の併記▽薬局のレセプトコンピュータにデータを取り込みやすくする2次元バーコードの表示――などの変更を加えた。
将来は、提供する情報をさらに拡充したい考えだ。院外処方箋発行時に同時に印刷する情報提供用紙を新たに設けて、さらに詳しい検査値やミニ薬歴、薬局から病院への情報フィードバック欄などを掲載する方向性で今後、具体的な検討を進める予定だ。
昨年秋に京大病院が実施に踏み切ったことがきっかけになって、院外処方箋への検査値表示は今後、大規模な基幹病院に広まる可能性がある。
現在、九州大学病院など各地の複数の大学病院が、実施に向けた検討を進めている模様だ。中小病院まで視野に入れた場合、医薬品医療機器総合機構が昨年、全国の8536病院を対象に実施した調査(回収率53・4%)で、院外処方箋に病名や検査値を記載している病院は全国に34施設存在することが分かっている。