金沢医科大学の研究グループが発表
金沢医科大学糖尿病・内分泌内科学永井貴子医員らによる研究グループは、内因性抗線維化ペプチドN-acetyl-seryl-aspartyl-lysyl-proline(AcSDKP)が、糖尿病における腎線維化と内皮細胞-間葉系細胞分化を抑制することを発見した。1月29日、金沢医科大学より発表されたほか、研究成果の詳細は「Biomed Research International」に1月26日付で掲載された。
内因性抗線維化ペプチドAcSDKPは、アンギオテンシン変換酵素(ACE)の基質で、ACEのN末側活性部位により不活化される造血幹細胞の分化増殖抑制因子。腎細胞の増殖抑制作用などで注目されており、腎疾患における研究も進んでいる。
また、臓器線維化に重要な線維芽細胞の由来において、内皮細胞-間葉系細胞分化の意義にも注目が集まっており、今回の研究は、そうした背景を受けたものである。
(画像はwikiメディアより引用)
効果と分子メカニズムを解明、既存治療に対する相加的腎保護効果などで期待
研究グループは、streptozotocin(STZ)誘導1型糖尿病CD-1マウス(STZ投与後6カ月)における腎線維化に対し、試験を実施。ACE阻害薬のimidapril単独療法に比べ、AcSDKPの追加投与により、症状が有意に改善することを確認した。またこの際、内皮細胞-間葉系細胞分化(EndMT)の抑制も確認されたという。
糖尿病マウス腎では、抗EndMT機能を有するmicroRNA let-7 familyの発現が低下していたが、imidaprilとAcSDKPの投与により、正常マウスと同レベルにまで改善することを突き止めた。microRNA let-7の発現を制御する線維芽細胞増殖因子受容体も、糖尿病マウス腎で低下していたが、同じくimidaprilとAcSDKPの投与により正常化したという。
さらに糖尿病腎では血管内皮細胞にmicroRNA let-7の標的遺伝子であるTGFbR1が強発現するが、これもimidaprilとAcSDKP治療により、発現を正常化することに成功している。
研究グループでは、今回の研究結果により、ACE阻害薬を用いた既存の糖尿病性腎症治療に対するAcSDKPの相加的腎保護効果と、その腎保護効果におけるmicroRNA let-7 familyの正常化、および、それがもつ重要な意義が示されたとしている。(紫音 裕)
▼外部リンク
N-acetyl-seryl-aspartyl-lysyl-proline inhibits diabetes-associated kidney fibrosis and endothelial-mesenchymal transition
http://www.hindawi.com/journals/bmri/aip/696475/
金沢医科大学 論文発表について
http://www.kanazawa-med.ac.jp/blog/2014/01/