昨年末に決定した診療報酬改定率では、診療報酬本体部分を0・73%引き上げ、このうち0・63%で消費増税に伴うコスト増に対する補填を行うことになっていた。
0・63%のプラスによって生じる約2600億円の財源は、病院に約1600億円、診療所に約600億円、調剤に約100億円、歯科に約200億円が配分されることになっており、調剤については大半を基本料の引き上げに振り分け、財源の残りは補完的に個別項目に上乗せする方針が決まっていた。
調剤では、個別項目への対応として、現行で投与日数に応じて30点と270点の2段階評価になっている「一包化加算」と、「無菌製剤処理加算」の対象薬剤に麻薬や乳幼児の中心静脈栄養法輸液などを追加することに伴う点数の上乗せを行う。
病院・診療所は、初・再診料のほか、200床以上の病院が算定する外来診療料を3点、入院基本料も2%程度引き上げる。歯科は初診料を16点、再診料を3点引き上げる。
中医協の森田朗会長は、「医療機関の消費税負担の問題を診療報酬で対応しようとすることは技術的に困難」との認識を示した上で、「個別項目に上乗せすることが望ましいのかもしれないが、その項目を具体的に特定することは限られた時間の中では不可能。公益委員として、苦渋の決断の結果、このような裁定を行った」と説明した。
ただ、政府・与党で医療にかかる税制のあり方について、引き続き検討するとされていることを踏まえ、「今後の消費税引き上げの際には、今回の対応を必ずしも前提とはせず、より適切な解決が図られるべき」とした。
公益裁定には議論の余地がなく、支払・診療の両側は公益側が示した内容を受け入れることになっているが、支払側の白川修二委員(健康保険組合連合会)は、「診療側の意見を100%採用し、われわれの意見は全く無視という結論になっている。こういうことが続くのであれば、今後、公益裁定に委ねることはできなくなる」と不満を示した。